精神分析と美
THE APPREHENTION OF BEAUTY
判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 328頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-07550-9 |
Cコード | C1011 |
発行日 | 2010年8月19日 |
備考 | 現在品切 |
THE APPREHENTION OF BEAUTY
判型 | A5判 |
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頁数 | 328頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-07550-9 |
Cコード | C1011 |
発行日 | 2010年8月19日 |
備考 | 現在品切 |
「母親の外面的美しさに触れることで、赤ん坊は情熱的性質を帯びた情緒的体験を味わうこととなり、その結果、それらの対象を「美しいもの」と見なすことができるようになる。しかし、赤ん坊は、母親の振舞い、見え隠れする乳房と目の輝き、風光に雲の影が射すがごとくに感情が横切る面持ちなどの意味合いを心得ていない。畢竟、赤ん坊は、言葉もわからなければ、慣習的に用いられる非言語的合図やコミュニケーションもわからない未知の国にやってきたのだ。(…)赤ん坊は母親がベアトリーチェなのか、それとも無情の美女なのかを見定めることができない。これが美的葛藤である。(…)しかし、発達の上で、また精神病理の構造において、美的葛藤はいかなる役割を果たしているのだろうか?」
精神分析の世界において、ポストクライン派の最重要人物ともいわれるドナルド・メルツァー。乳幼児期の美的体験は人間の原初的な体験であると規定したメルツァーが、芸術の創造、あるいは精神分析プロセスにおいて、美的体験のもつ役割に焦点を当てたのが本書である。
本書における〈美〉をめぐる諸問題——無意識、暴力、父親、そして新たな〈美〉の創造という営み——への考察は、フロイトとクラインが〈欲動〉によって、またビオンが〈思考〉によって語ろうとした人間の存在様式を規定する根源的要素を、〈美〉という要素によって語ろうとしたものとも読める。
精神分析にとって美とは何か。本書の目的は単にそれらの問いに理論的解答を与えることにはない。メルツァーが本書に描く美的体験は、われわれに再度美的体験をもたらすとともに、新たな〈美〉の創造へと掻き立てるであろう。
緒言(メグ・ハリス・ウィリアムズ)
序章
第一章 美の理解
第二章 美的葛藤 発達過程におけるその位置
第三章 第一印象をめぐって
第四章 美的相互性をめぐって
第五章 発達早期における父親の役割
第六章 暴力の問題
第七章 未知の国 『ハムレット』における美的葛藤の形(メグ・ハリス・ウィリアムズ)
第八章 精神分析プロセスにおける美的葛藤の位置
第九章 美的葛藤からの退避 冷笑主義、倒錯、そして、悪趣味
第十章 美的対象の回復
第十一章 夢を抱えること 美的評価の本質(メグ・ハリス・ウィリアムズ)
第十二章 洞穴の中の影、壁に書かれた文字
解題 上田勝久
監訳者あとがき
索引