みすず書房

韓国南西部に実在するハンセン病隔離の島・小鹿島(ソロクト)。植民地時代、日本の政策によって強制収容された人々が過酷な労働や断種手術を強いられた歴史をもつ。
戦後、1960年代初頭の軍政下に、この島の病院長として赴任した現役軍人の趙白憲(チョ・ベクホン)は、「楽園づくり」を開始する。患者たちが自立した生活を送れるよう、自分たちの手で海を堰き止めて農地をつくるという壮大な計画だ。
この島では《自由》が何より希求されてきたが、自由には疑いと憎しみと裏切りがついてまわる。住民総出で石をかついで海に投げ込む作業をどれほど続けても、先が見えず、不信が渦巻く。
島の長老の言う「自由より貴いもの、愛」は、いつの日にか実現するのか。はたして陸地は現われるのか──。
伝統芸能パンソリの旅芸人を描く林権澤監督の大ヒット映画「風の丘を越えて」の原作者・李清俊の代表作となった長編小説。

(カバー画 趙昌源「霊魂の歌」 国立ハンセン病資料館蔵)

目次

第一部
死者の島
楽園と銅像

第二部
出小鹿記
裏切り 1
裏切り 2

第三部 
天国の囲い

訳者あとがきにかえて──「未来の故郷」への脱出行、そして「問いの島」へ

書評情報

藤野豊(富山国際大学准教授)
北国新聞2010年11月21日
今福龍太(文化人類学者)
読売新聞2011年2月13日(日)
田村元彦(西南学院大准教授)
西日本新聞2011年3月27日(日)

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