みすず書房

1970年代、大学病院に身をおいていた著者はあるひとつの新語を作っている。「外来分裂病(外来統合失調症)」という言葉である。それまで長い入院生活による治療が主であった統合失調症が軽症化し、精神科外来で治療可能な患者の増加に気づいた著者が生み出した言葉であった。
のちに大学を退官した著者は、街角に精神科外来クリニックを開く。本書は、クリニックからみた患者の姿とその治療から抽出された、「外来精神医学」という新たな医学のあり方を示すものである。統合失調症、うつ病、社会不安障害、さらには心身医学との協同をめぐって、診察室で育まれてきた臨床観がそこにはある。
「クリニックでは正確な診断は後からでいい。そのかわり治療は最初の瞬間から始めなければならない」
大病院でなくてもできる治療とはなんだろうか。そして、大病院ではできない治療とはなんだろうか。著者の臨床観の基礎をなす1970年代の重要論文、「クリニックで診るこのごろの軽症統合失調症」(2010)などの単行本未収の論文に加え、書き下ろしの最新論考を含む10篇を収録。

目次

まえがき

「外来精神医学」雑感(2006)
精神症状のみかた——一診療所のドクターのために——(1994)
神経症学からみた心身医学の位置づけ(1984)
対人恐怖症と社会不安障害——伝統的診断から社会不安障害を考える——(2006)
外来分裂病(仮称)について(1981)
二つの症例報告(1975)
精神分裂病者とのコンタクトについて——心理療法の経験から——(1962)
分裂病の了解学はどこまで進んだか(1983)
クリニックで診るこのごろの軽症統合失調症(2010)
精神医学における内因性概念について——クリニック外来での一考察——(2011)

解題

関連リンク