みすず書房

青年期のこころはなぜ特有のアイデンティティ葛藤に揺れ、ときとして病いに接近するのであろうか。本書は1970年代に「スチューデント・アパシー」と呼ばれる大学生に見られる特有の無気力症状に、いち早く着目した著者の青年期論を集成するものである。
かつて、青年を語ることは「成長」という概念に支えられていた。エリクソンやサリヴァンの発達心理学には年齢相応の発達課題があり、それを乗り越えて青年は成長していくと考えられてきた。本書の所収論文にも、常に患者の心理的成長を治療へとつなげていく著者の姿勢が通底している。
「医師‐患者関係を通じて病人の心理的成長を期待しながらの治療をすることに、今も昔も誇りを感じている。そういえば最近の若い精神科医は心理的治療を好まない。むしろ薬物療法を好む。薬物療法の目指すのは修復であり成長ではない」
著者が『青年期』という小著をあらわした70年代から80年代の主要論文を中心に、ひきこもりとうつ病の関係に触れた書き下ろし論考「クリニックで診る青年の「ひきこもり症」」を加えた、熟達の精神科医による臨床論集第3弾。

目次

まえがき

青年期精神医学の現況と展望(1980)
今日の青年期精神病理像(1976)
自立と個性化(1979)
大学生にみられる特有の「無気力」について——長期留年者の研究のために——(1971)
アノレキシア・ネルボザァの心理的側面(1985)
家族についての精神医学的一考察(1983)
クリニックで診る青年の「ひきこもり症」(2011)

解題

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