みすず書房

マックス・ウェーバーの日本

受容史の研究1905-1995

MAX WEBER IN JAPAN

判型 A5判
頁数 456頁
定価 8,250円 (本体:7,500円)
ISBN 978-4-622-07709-1
Cコード C3036
発行日 2013年1月18日
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マックス・ウェーバーの日本

1984年、ドイツのJ.C.B.Mohr社から『マックス・ウェーバー全集』の最初の数巻が刊行されたとき、出版部、編集者、スタッフたちが驚いたのは、出版部数の三分の二がドイツでもなく、ヨーロッパでもアメリカでもなく、日本で売れたという事実だった。このような瞠目すべき事態を生んだ日本の社会科学の事情、ウェーバーと日本との親和性とは、いったい何なのか。
1905年、福田徳三が『国家学会雑誌』に日本ではじめて紹介したマックス・ウェーバーの記事にはじまり、おもに日本の国民経済学者によって受容された草創期から、大戦間期、一方でエミール・レーデラー、クルト・ジンガー、カール・レーヴィットにいたる日本に滞在したドイツ人研究者、他方でドイツに留学した三木清、尾高朝雄らによるウェーバー研究の広がりの時代があった。
そして戦後、大塚久雄を中心に丸山眞男、川島武宜らの影響のもと、マックス・ウェーバーの著作の翻訳や研究書の数はどんどん膨らんでゆく。1964年、500名が参加した東京大学における「マックス・ウェーバー生誕百年シンポジウム」は、その象徴的場であったろう。そこには、戦後における日本社会の分析や道筋の模索、マルクスとの対抗あるいは相互補完の可能性など、さまざまな思いや制約条件が重なっていた。さらに安藤英治、内田芳明、折原浩から山之内靖まで、ウェーバーの読まれ方は批判的に継承されてゆく。
その受容史を連綿と追った本書は、日本のウェーバー研究の画期的資料であるのみならず、社会科学を中心とした日本のアカデミズム、学問のあり方を浮き彫りにするだろう。巻末には詳細な「マックス・ウェーバーの著作の日本語訳一覧(1905-2012)」および「文献」を付す。

目次

凡例
日本語版への序文
序文

序論
第一章 マックス・ウェーバーの著作におけるテーマとしての日本——受容の出発点
第二章 マックス・ウェーバー受容のあけぼの 1905‐1925
1 1900年頃の日本における社会と「社会科学」
2 日本の国民経済学によるマックス・ウェーバーの「発見」
3 大正時代後期におけるマックス・ウェーバー研究のあけぼの
第三章 業績の発見 1926‐1945
1 精神的相互作用——戦間期独日文化科学者の外国滞在
a エミール・レーデラー/b 三木清/c 尾高朝雄/d クルト・ジンガー/e カール・レーヴィット
2 マルクスの影のもとで——1930年前後の日本の社会科学におけるマックス・ウェーバー
3 「求道者」マックス・ウェーバー——半全体主義的軍国主義下での受容 1936, 37‐1945
(a) 価値判断自由/(b) 東洋社会の構造分析/(c) 宗教と経済倫理/(d) 政治社会学の断片/(e) 人と作品の一体性——カール・ヤスパースの影響
第四章 日本の「第二の開国」期におけるマックス・ウェーバー研究 1945‐1965
1 出発時の政治社会状況と文化的諸条件
2 戦後初期のマックス・ウェーバー解釈 1945‐1955
3 近代主義者とマックス・ウェーバー
a 大塚久雄/b 丸山眞男/c 川島武宜
4 日本のマックス・ウェーバー研究に対するアメリカの影響
a 「アメリカ化」の傾向/b 近代化論 216/c ウェーバーからベラーへ——日本におけるプロテスタンティズムの機能的等価物を求めて/d 政治的階級としての日本の官僚制——ウェーバーの視点からの分析
5 総括——マックス・ウェーバーシンポジウム(1964年12月、東京)
第五章 1970年以後のマックス・ウェーバー・ルネサンス
1 国際的条件
2 足跡をたどる旅——日本人研究者のドイツ旅行と伝記への新たな関心
3 打ち出の小づち——日本における社会・政治思想の「古典」としてのマックス・ウェーバー
第六章 結語


訳者あとがき
文献
マックス・ウェーバーの著作の日本語翻訳一覧(1925‐2012)
マックス・ウェーバー作品名索引
人名索引

書評情報

柄谷行人(哲学者)
朝日新聞2013年2月24日(日)
木村凌二
毎日新聞2013年3月10日(日)
牧野雅彦(広島大学教授・政治思想史専攻)
週刊読書人2013年4月12日
出版ニュース
2013年6月下旬号
本村凌二(東大名誉教授・西洋史)
毎日新聞「2013年この3冊」2013年12月22日

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