みすず書房

ゾミア

脱国家の世界史

THE ART OF NOT BEING GOVERNED

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 464頁
定価 7,040円 (本体:6,400円)
ISBN 978-4-622-07783-1
Cコード C1022
発行日 2013年10月 3日
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ゾミア

アカ、カチン、フモン、ラフ……。様々な人々が独自の社会を築いたインドシナ半島の奥地、ゾミア。この深い山中の民族文化や生業は、国家を回避するための戦略だった。世界の自由民たちが息づくグローバル・ヒストリー。

本書のテーマはシンプルかつ深遠だ。スコットは言う。「原始的」な民族は、わざわざ、そのような生活習慣を選ぶことで、国家による束縛を逃れているのだ、と。
彼らが、焼畑に根菜類を植え、文字を使わず口承で伝え、親族関係を自由自在に変化させる文化を発達させてきたのは、権力からの自由と自治のための戦略だった、というわけだ。
さらにスコットの眼差しは、全世界に広がる。アメリカ大陸の逃亡奴隷によるマルーン共同体、ヨーロッパのロマ、ロシアのコサック……彼らの社会の成り立ちのなかにも、課税や奴隷化を逃れ、自由を希求する構えが読み込まれていく。
国家による管理の無力さを一貫して追及してきた政治学者・人類学者による、壮大なスケールの〈もうひとつの国家論〉。

「ゾミアは、国民国家に完全に統合されていない人々がいまだ残存する、世界で最も大きな地域である[…]険しい山地での拡散した暮らし、頻繁な移動、民族的アイデンティティの柔軟さ、千年王国的預言者への傾倒、これらすべては、国家への編入を回避し、自分たちの社会の内部から国家が生まれてこないようにする機能を果たしてきた[…]国家形成から逃れた人々の歴史抜きに、国家形成を理解することはできない」(本文より)

目次

はじめに
I:山地、盆地、国家——ゾミア序論
周縁の世界/最後の囲い込み運動/臣民を作りだす/「ゾミア」——偉大な山の王国、もしくはアジア大陸部の跨境域/避難地帯/山地と平地の共生史/東南アジア大陸部のアナーキズム史観に向けて/政治秩序の基本単位

II:国家空間——統治と収奪の領域
国家空間の地理学と地勢の抵抗/東南アジアにおける国家空間のマッピング

III:労働力と穀物の集積——農奴と灌漑稲作
人口吸引装置としての国家/国家景観と臣民の形成/「読みにくい」農業の撲滅/多様性のなかの統一——クレオールセンター/人口支配の技術/奴隷制/財政面の把握しやすさ/自壊する国家空間

IV:文明とならず者
平地国家と山地民——双子の影/野蛮人への経済的な需要/創られた野蛮人/借り物の装飾品をとりこむ/文明化という使命/規範としての文明/国家を去り、野蛮人のほうへ

V:国家との距離をとる——山地に移り住む
他の避難地域/ゾミアに移り住む——長い歩み/避難の遍在とその原因/課税と賦役/戦争と反乱/略奪と奴隷売買/山地へ向かう反逆者と分派/国家空間における過密、健康、生態環境/穀物生産に逆らうように/距離という障壁——国家と文化/乾燥地の小ゾミア、湿地の小ゾミア/野蛮人のほうへ/アイデンティティとしての自律、国家をかわす人々

VI:国家をかわし、国家を阻む——逃避の文化と農業
ある極端な事例——カレンの「避難村」/なにより場所、つぎに移動性/逃避農業/新大陸の視点/「逃避型農業」としての移動耕作/逃避農業としての作物選択/東南アジアの逃避焼畑/東南アジアの逃避作物/トウモロコシ/キャッサバ/逃避の社会構造/「部族性」/国家らしさと永続的上下関係の回避/国家の影で、山地の影で

VI+1/2:口承、筆記、文書
筆記の口承史/読み書きの偏狭性と文字喪失の前例/筆記の欠点と口承の利点/歴史をもたないことの利点

VII:民族創造——ラディカルな構築主義的見解
部族と民族性の矛盾/他民族を吸収して国家を作る/低地をならす/いくつものアイデンティティ/ラディカルな構築主義/部族を作りだす/家系の体面を保つ/立ち位置/平等主義——国家の発生を防ぐ

VIII:再生の預言者たち
生まれつきの預言者、反乱者/フモン/カレン/ラフ/周縁と疎外の弁神論/無数の預言者たち/「遅かれ早かれ」/高地における預言運動/対話、模倣、つながり/臨機応変——究極の逃避型社会構造/民族合作の宇宙論/キリスト教——隔たりと近代化のための資源

IX:結論
国家をかわし、国家を阻む——グローバル-ローカル/撤退の諸段階と適応/文明への不満分子

用語解説
小さき民に学ぶ意味——あとがきに代えて:佐藤仁
原注
索引

書評情報

柄谷行人(哲学者)
朝日新聞2013年11月24日(日)
柄谷行人
朝日新聞(今年の3点)2013年12月29日
笹岡正俊(北海道大学)
林業経済2015年11月