みすず書房

「本は友だちである。いつ、どのようなきっかけから友情が結ばれたのか、実をいうと、よく憶えていないのだ。きっかけがあったはずなのに、なぜか思い出せない。気がつくと、かたわらにいた。何かのおりに、また会いたくなる。さりげなく知恵をかしてくれる」
(「あとがき」)

会いたい人に会うように本を読む。大切に読んできた本たちについて、友だちを紹介するように綴る。それぞれの本には、自由で、自立した精神でコツコツと生きた、魅力的な人生がそのまま映し出されている。
たとえば岡本武司(1935‐2002)。定年退職後の人生を「好きなこと」にあて、ロシア沿海州の猟師「デルスウ・ウザーラ」の足跡を追った。「自分の生き方と結びついているからこそ、「好きなこと」が無限に遠くへ人をつれていく」。たとえば森於莵(1999‐1967)。鷗外の長男、解剖学者にして印象的な文章をいまにのこす。「老いた父親が求め、めざし、ようやく手にいれたものを、長男於莵は早くから過分なまでに身におびていた」。
友だちみたいな本、そして本を通して友だちになった人について。53篇のエッセイ。

目次

I 会いたい人と会うように
江藤文夫 (1928-2005)
杉浦日向子 (1958-2005)
辻征夫 (1939-2000)
池田晶子 (1960-2007)
森浩一 (1928-2013)
岡本武司 (1935-2002)
木田元 (1928-2014)
モラエス (1854-1929)
チャペック (1890-1938)
メネトラ親方 (1740-1812)
須崎忠助 (1866-1933)
中尾佐助 (1916-1993)
坂崎重盛 (1942-)

II あの頃のこと
昭和の物語
替え歌
学童服
浪曲
ちゃぶ台
中廊下
家の神
温泉
アパート
時代劇
昔話
巡礼

III 山と川と花と
川魚
サル
山びと
野の花
植物の「こころ」
うるし
御蔵島
漂流記


IV ともに考える
ヒトラー
ドイツ・1936年
虐殺の証言 I
虐殺の証言 II
ユダヤ女性
「白バラ通信」
放射能
加藤周一
日本国憲法

V 解説をたのまれて
『漱石の長襦袢』
『挨拶はたいへんだ』
『日本の秘境』
『残夢整理』
『交遊録』
『文林通言』
『単線の駅』
『三田の詩人たち』
『素白随筆遺珠・学芸文集』
『耄碌寸前』

あとがき
とりあげた本の一覧

書評情報

(樹)
聖教新聞2015年3月14日(土)

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