磁力と重力の発見 3
近代の始まり
判型 | 四六判 |
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頁数 | 432頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-08033-6 |
Cコード | C1340 |
発行日 | 2003年5月22日 |
判型 | 四六判 |
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頁数 | 432頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-08033-6 |
Cコード | C1340 |
発行日 | 2003年5月22日 |
近代物理学成立の真のキーは力概念の確立にある。そこから〈遠隔力〉概念の形成過程を追跡してきた長い旅は、第3巻でようやく近代科学の誕生に立ち会う。
実験的研究と「地球は磁石である」という結論によって近代科学への道を開いたと高く評価されるギルバートは、一方、それゆえに地球は霊魂を有した生命的存在であるとも論じた。しかし、ルネサンスの魔術師デッラ・ポルタ(本書第2巻)に通じるその認識こそが、地球を不活性で不動の土塊と見るアリストテレス宇宙像を解体し、地動説の受容を促したのである。実験と観察の重視という方法もまた、スコラ学に対立する魔術・錬金術の系譜にある。他方、スコラにかわる新哲学として登場した機械論は、原因やメカニズムの解明を要求することで魔術の解体をはかったが、みずからは遠隔力の説明に失敗したのである。
霊魂論・物活論の色彩を色濃く帯びたケプラーや、錬金術に耽っていたニュートン。重力理論を作りあげていったのは彼らであり、近代以降に生き残ったのはケプラー、ニュートン、クーロンの法則である。魔術的な遠隔力は数学的法則に捉えられ、合理化された。壮大な前=科学史の終幕である。
第十七章 ウィリアム・ギルバートの『磁石論』
1 ギルバートとその時代
2 『磁石論』の位置と概要
3 ギルバートと電気学の創設
4 電気力の「説明」
5 鉄と磁石と地球
6 磁気運動をめぐって
7 磁力の本質と球の形相
8 地球の運動と磁気哲学
9 磁石としての地球と霊魂
第十八章 磁気哲学とヨハネス・ケプラー
1 ケプラーの出発点
2 ケプラーによる天文学の改革
3 天体の動力学と運動霊
4 ギルバートの重力理論
5 ギルバートのケプラーへの影響
6 ケプラーの動力学
7 磁石としての天体
8 ケプラーの重力理論
第十九章 一七世紀機械論哲学と力
1 機械論の品質証明
2 ガリレイと重力
3 デカルトの力学と重力
4 デカルトの機械論と磁力
5 ワルター・チャールトン
第二十章 ロバート・ボイルとイギリスにおける機械論の変質
1 フランシス・ベーコン
2 トマス・ブラウン
3 ヘンリー・パワーと「実験哲学」
4 ロバート・ボイルの「粒子哲学」
5 機械論と「磁気発散気」
6 特殊的作用能力の容認
第二十一章 磁力と重力——フックとニュートン
1 ジョン・ウィルキンズと磁気哲学
2 ロバート・フックと機械論
3 フックと重力——機械論からの離反
4 重力と磁力の測定
5 フックと「世界の体系」
6 ニュートンと重力
7 魔術の神聖化
8 ニュートンと磁力
第二十二章 エピローグ——磁力法則の測定と確定
1 ミュッセンブルークとヘルシャムの測定
2 カランドリーニの測定
3 ジョン・ミッシェルと逆二乗法則
4 トビアス・マイヤーと渦動仮説の終焉
5 マイヤーの磁気研究の方法
6 マイヤーの理論——仮説・演繹過程
7 クーロンによる逆二乗法則の確定
あとがき
注
文献
索引
Yoshitaka Yamamoto, THE PULL OF HISTORY: Human Understanding of Magnetism and Gravity through the Ages (World Scientific, 2018).
http://www.worldscientific.com/worldscibooks/10.1142/10540
2018年2月刊行です。
『磁力と重力の発見』では、古代ギリシャ・ローマにはじまり17世紀にいたる「科学革命前史」が解き明かされます。そのあとがきにはこう記されました。
〈本書を書く過程で、1500年代ルネサンスと言われている時期の西洋に「16世紀文化革命」ともいうべき知の世界の地殻変動があったのではないかということに思い当たった。この点をさらに明確にする課題については、今後の宿題にしておきたい。〉
「宿題」には当時すでに着手され、待つこと4年、次著『一六世紀文化革命』に結実しました(全2巻、2007年)。さらに続く『世界の見方の発見』(2014年)をもって、なぜ、どのように西欧近代において科学が生まれたのかを追う三部作が完結します。
*
『磁力と重力の発見』全3巻は2003年度、〈制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績、あるいは科学技術ジャーナリストの仕事のように学問と社会をつなぐ役割を果たした業績〉を顕彰するために創設された第1回パピルス賞(財団法人 関科学技術振興記念財団)、および第57回毎日出版文化賞(毎日新聞社)、第30回大佛次郎賞(朝日新聞社)を受賞しました。