みすず書房

山本義隆『世界の見方の転換』全3巻

1 天文学の復興と天地学の提唱  2 地動説の提唱と宇宙論の相克  3 世界の一元化と天文学の改革 [2014年3月20日刊]

2014.03.31

[『数学文化』では新連載スタート 山本義隆「小数と対数の発見」]
すでに古典たる評価を得ている『磁力と重力の発見』『一六世紀文化革命』に続き、「なぜ、どのように西欧近代において科学が生まれたのか」を解き明かす。近代科学誕生史〈三部作〉を締めくくる待望の書き下ろし。2014年3月20日刊行。

プトレマイオス理論の復元にはじまり、コペルニクス地動説をへてケプラーにいたる15-16世紀天文学の展開は、観測にもとづく天文学を言葉の学問であった宇宙論の上位に置くという学問的序列の一大変革をなしとげ、「まったく新しい自然研究のあり方を生みだした」。それは、「認識の内容、真理性の規準、研究の方法、そして学問の目的、そのすべてを刷新する過程、端的に〈世界の見方と学問のあり方の転換〉であり、こうして17世紀の新科学を準備することになる」(「まえがき」より)。

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「あとがき」より――『数学文化』では新連載「小数と対数の発見」スタート

なお本書は、じつは古代以来の天文学の発展にともなう数学の歩みについて、当初の原稿では触れていたのですが、全体があまりにも膨大になりすぎたので、削除しました。この部分については、雑誌『数学文化』の編集部から寄稿を依頼されたので、連載として掲載していただくことになりました。(「あとがき」より)

『世界の見方の転換』の「あとがき」にこのように予告された新連載が、『数学文化』第21号(2014年3月31日発行)からスタートします。
『数学文化』第21号(日本数学協会 編集/日本評論社 発行) http://www.nippyo.co.jp/book/6498.html

◆近代科学誕生史〈三部作〉 既刊

『磁力と重力の発見』

[全3巻]
〈遠隔力〉の概念が、近代科学の扉を開いた。古代ギリシャからニュートンとクーロンにいたる力概念の形成を追い、科学史の空白の一千年余を解き明かす。(2003年5月刊)

〈制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績、あるいは科学技術ジャーナリストの仕事のように学問と社会をつなぐ役割を果たした業績〉を顕彰するために創設された2003年度第1回パピルス賞(財団法人 関科学技術振興記念財団)、および第57回毎日出版文化賞(毎日新聞社)、第30回大佛次郎賞(朝日新聞社)受賞。

山本義隆「第30回大佛次郎賞受賞あいさつ」より

大佛次郎賞という賞をいただいて、正直いうと私はどういう賞かよく知らなかったのですが、ただ大佛次郎という作家は、好きです。『鞍馬天狗』は読んでいませんけれども、一連のフランスものといわれるノンフィクション、とくにパリ・コミューンを扱った『パリ燃ゆ』は感激しました。 …続きを読む »
(2004年1月28日の同賞贈呈式でのスピーチをもとに、月刊『みすず』2004年3月号、著者の同意を得て抜粋・転載)

山本義隆『磁力と重力の発見』3「あとがき」より

本書は固有の意味での「物理学史」が成立する以前が主要なテーマになっている。したがって最近流行のサッカー用語でいうならば、これまでの仕事はある程度ホームでのゲームであったが、今回はまったくアウェーでの勝負ということになる。なお、本書、とくに第2巻を読んでいただければわかるように、本書を書く過程で、1500年代ルネサンスと言われている時期の西洋に「16世紀文化革命」とも言うべき知の世界の地殻変動があったのではないかということに思い当たった。この点をさらに明確にする課題については、今後の宿題にしておきたい。
(著者の同意を得て抜粋・転載)

『磁力と重力の発見』全3巻 書評より

山形浩生・書評「現代科学は魔法直系の末裔だった!」抜粋

正解にたどりついておしまいの出来レースではない、ダイナミックな観念の歴史を、本書は各時代の世界観との関わりで入念に描き出す。
本書の世界観へのこだわりを、ぼくは懐かしい思いで読んだ。それはかつて著者に予備校で教わったものだったからだ。 …続きを読む »
(朝日新聞2003年7月20日、著者の同意を得て抜粋・転載)

野家啓一・書評「「科学への歴史」を見事に描く」抜粋

全三巻、総計一千頁に及ぶ大著である。ようやく読了し、主人公の「磁力」が時を経て「重力」へと成長して行く壮大な大河小説を読み終えたような心躍りと充実感を味わった。 …続きを読む »
(週刊読書人2003年9月12日、著者の同意を得て抜粋・転載)

河本英夫・書評抜粋

議論の焦点は、書名にも現れているように、磁力、重力の語に共通に伴っている「力」という概念そのものに向けられていく。「力」というのはいったい何なのか。明らかに遠隔的に働くが、それ自体は変化し、さまざまな形態を取る。後に力の変化のさなかに量的な保存が見出されたとき、それが力の保存則、すなわちエネルギー保存則となる。力は近代の自然学のなかでさまざまな発見をもたらした稀有な概念であった。 …続きを読む »
(『科学』2003年10月号、著者の同意を得て抜粋・転載)

江沢洋・書評抜粋

接触による普通の力と違って、磁石は距離を隔てて鉄片を引くように見える。古代ギリシャの哲学者たちは、この磁力を目に見えない粒子を介した近接作用とみるか、霊的な遠隔作用とみるかの二通りの思想を生み出した。 …続きを読む »
(『日本物理学会誌』第59巻5号、2004年、著者の同意を得て抜粋・転載)

池内了・書評「魔術思想と近代科学」抜粋

本書の著者山本義隆は、アインシュタインとは異なった方法で力の本質について深く考えた人である。万有引力の発見によって近代物理学が成立し得たと言っても過言ではない。では、万有引力の発見において、力は接触によって作用するという考えを超越して、いかに遠隔作用という魔術的な力の概念が生まれ出たのだろうか。 …続きを読む »
(『文學界』2004年6月号、著者の同意を得て抜粋・転載)

『一六世紀文化革命』

[全2巻]
大学や人文主義者を中心としたルネサンス像に抗し、16 世紀ヨーロッパの知の地殻変動を綿密に追う。『磁力と重力の発見』と『世界の見方の転換』の結節点。(2007年4月刊)

山本義隆「「ルネサンス」と「一六世紀文化革命」」より

私が今回『一六世紀文化革命』でもって描いた事実の多くは、個別にはこれまでに知られていた。(……)しかし、これらがおりからの印刷書籍の登場(印刷革命)と国民国家形成の主要な要素としての国語の形成(言語革命)を背景に、さらには大航海の経験による古代の権威の失墜を追い風にして、軌を一にして全面展開された事態は、巨大なひとつの「文化革命」と捉えることによってはじめて、科学史のなかにしかるべく位置づけられるように思われる。(……)このようなあつかましい主張が、無免許運転者の暴走なのか、それともビギナーズ・ラックで鉱脈の末端を掘りあてたのか、その点の判断は読者の評価に委ねたいと思う。
(月刊「みすず」2007年5月号、著者の同意を得て抜粋・転載)

山本義隆『一六世紀文化革命』2「あとがき」より

もっと話を遡れば、ちょうど10年前に日本評論社から上梓した『古典力学の形成』のやはり末尾に書いた「現在では全世界を制覇するまでになった近代の科学技術が、なぜ西洋近代にのみ誕生したのかは、科学史・技術史のつきせぬ謎である。というか、科学史とか技術史という学問は、要はこの問題の解決のためにこそ存在しているのであろう」という問題設定に始まる。現在は、この問題にたいして、前著『磁力と重力の発見』とあわせて、今回の著書で非力ながら自分なりの解答を与えることができたという気分でいる。 …続きを読む »
(著者の同意を得て抜粋・転載)

『一六世紀文化革命』全2巻 書評より

野家啓一・書評「「谷間の時代」の知の変動 解明」抜粋

西洋近代は十四、五世紀のルネサンスに始まるというのが、高校で習う「世界史」の定説であろう。それに対して、英国の歴史家バターフィールドは、十七世紀の「科学革命」に近代の真の始まりを見た。いわゆる科学革命論である。そのため、両者の間に位置する十六世紀は「谷間の時代」として、歴史家に顧みられることはなかった。山本義隆氏の新著は、この埋もれた時代に光を当て、十六世紀に胎動した「知の世界の地殻変動」をヨーロッパの知の布置を刷新した文化革命としてとらえ直す。 …続きを読む »
(山陽新聞2007年5月6日他、著者の同意を得て抜粋・転載)

金森修・書評「科学革命を準備した実践知の集成」抜粋

『磁力と重力の発見』が、比較的伝統的な概念史的手法に貫かれているのに比べると、論じられる対象が自然界と多少とも直接的な交叉を示す中で練り上げられていく知識群だという意味で、概念史からは大きく横逸している。しかも、その話題は、まるであの下村寅太郎が、無限論から芸術や歴史学へとその視点を拡大していったのをなぞるかのような、言説領野の拡張的構成を伴う。ざっと枚挙しただけでも造形芸術、外科学、植物画、製鉄、鉱山採掘、代数学、機械学、軍事技術、天文学、地理学などというように、である。それらについての論述の仕方はいつも通り、明晰かつ簡明で淀むところがない。細かい史実の追跡は十分役に立ち、読んでいて面白い。 …続きを読む »
(週刊読書人2007年6月8日、著者の同意を得て抜粋・転載)

米本昌平・書評抜粋

第一級の物理学者として出発した著者が、大学紛争に出あって野に下り、欧米の各国語はもちろん、ラテン語などをも読みこなして四年前、『磁力と重力の発見』を書き上げた。本書はこれに続く、17世紀の科学革命を準備した、16世紀ヨーロッパにおける知識生産に関する構造変動を描いてみせた労作である。 …続きを読む »
(読売新聞2007年6月24日、著者の同意を得て抜粋・転載)

山崎正和・書評「「手を使う人」による知の転換」抜粋

意表をつく着眼によって書かれた、「コロンブスの卵」のような本である。
西洋の一六世紀が偉大な造形の時代であって、レオナルドやデューラーが活躍したことは有名である。グーテンベルクの活版印刷が普及し、ルターが民衆に聖書を読むことを奨めたせいもあって、この頃からラテン語ではなく、国語による読み書きが広まったことも知られている。自然科学の先駆者として、パラケルススやチコ・ブラーエといった人たちが現れたことも、世界史の年表にある。
だが著者の洞察がこの三つの話題を結びつけると、一六世紀はたちまち一つの文化革命の時代となり、中世から近代への転換の軸となったようである。着眼の新しさは、この時代を知的な職人の台頭期として捉え、手を使う人が仕事を広げるとともに、その技能を活字で表現し始めた時代と見た点にあった。 …続きを読む »
(毎日新聞2007年7月29日、著者の同意を得て抜粋・転載)