みすず書房

「統合失調症の不治説も、数年、同じ奇矯な姿勢を保ちつづける人たちをみていればいかにもと思うけれども、他方で回復する人や社会的活動を継続している人が身辺にもあって、私には当初から統合失調症の治癒可能性が前提であった。統合失調症は裾野の広い病いなのであり、いや、理論的には、誰でもなりうる病いであることは結核に劣らないと私が思う理由になっていたと思う。いや、病気であるという認識がない病いであるという当時の定式によれば、私もなっていたかもしれず、現になっているかもしれない。私が、おれたちは統合失調症とは無関係であるといわんばかりの精神科医の陳述に最初から違和感を覚えた理由であり、回復過程の記述、不在に気づいた理由でもある」(「解説」より)

「絵画療法」を中心に、1970年代に続々発表された著者の論文は、統合失調症研究と治療のまさに転換を告げるものであった。本シリーズでは主に発病過程にアクセントをおいた『統合失調症1』と寛解(回復)過程を扱った『統合失調症2』に分け、代表的な論文をおさめる。本書には「統合失調症の発病過程とその転導」「統合失調症者における〈焦慮〉と〈余裕〉」「奇妙な静けさとざわめきとひしめき」「統合失調症者への精神療法的接近」「統合失調症に対する治療的接近の予備原則」の5編を収録。

目次

統合失調症の発病過程とその転導
統合失調症者における「焦慮」と「余裕」
奇妙な静けさとざわめきとひしめき——臨床的発病に直接先駆する一時期について
統合失調症者への精神療法的接近
統合失調症に対する治療的接近の予備原則
解説
初出一覧

関連リンク