みすず書房

「私が精神医療に希望するとしたら、病的なものだけをとり出すのでなく、むしろ、病的なものをこうむっている心身のほうに注目することであり、そうすれば、それはおのずと経過研究になり、回復の論理を照らし出すことになると私は思う。
かつて不治とされた病いの多くは、いちど〈もし回復したら、それはそもそもその病いではなかったのだ〉とされる時期をとおっている。これは法則のようなものである。統合失調症もそこを通ってきた。今、回復はありえないという断定から、かかわり方による変化が報告されるようになってきたかにみえる。
他方、回復とは完全に病いの経歴を無かったことにするものではない。多くのウイルスが生涯潜在感染をつづけ、思いがけない時に思いがけないいたずらをするのはよく知られている。人間はそのようなものをも包含した歴史的存在なのであろう」
(「解説より」)

「統合失調症の精神病理学は一般に発病の過程に精であり、寛解の過程に粗であるという印象がある」——この問題設定から生まれ、その後の研究と治療に大きな影響をあたえた3編(1973-76)を収録。

目次

統合失調症状態からの寛解過程
——描画を併用した精神療法をとおしてみた縦断的観察
統合失調症の寛解過程における非言語的接近法の適応決定
統合失調症の慢性化問題と慢性統合失調症状態からの離脱可能性

解説
初出一覧

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