みすず書房

精神医学と疾病概念

精神医学重要文献シリーズHeritage

判型 四六判
頁数 296頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-08238-5
Cコード C1311
発行日 2010年8月19日
オンラインで購入
精神医学と疾病概念

「健康と病気の境を論じるという議論は、決して抽象的な話題でなく、精神医学の体系が根幹のところで揺さぶられ、精神科医という同業者集団が、この問題を巡って大きく意見が対立する中での、議論だったのである。すなわち、「病気」の概念を巡る議論は、ひとりの精神科医である自分の立場・生き方を自らに、同業者に、そして社会に対してどのように示すか、という決意の問題であったことをうかがわせる」
(村井俊哉「解説」より)

本書の初版は1975年に刊行され、その前年に行われた精神医学者たちによる集会に端を発している。編者によるその討議集会のよびかけの言葉によれば、「伝統的な医学モデルによる疾患概念は社会モデルに挑戦されて」いた時代の、ある討議集会の記録である。
病気とは、健康とは、そして精神医学が治療の対象とすべき「疾患」とは何か。レイン、クーパーらによる反精神医学運動の波、さらには忍び寄る操作的診断基準の足音を聞きながら、討論の参加者は自らの精神医学観を明らかにしていく。
精神医学のみならず、社会学、遺伝学、精神衛生学など多様な立場から「疾患」の意味に迫った本書は、今日の精神医学の立脚点すらも問う迫真の書である。

目次

まえがき

病気と疾患、生活概念から生物概念へ  臺弘
類型と疾患についてのエッセイ   井上英二
精神医学における疾病概念——社会学的視点から  荻野恒一
内因精神病における疾病概念の今日の混乱について——心因論の立場からの考察   笠原嘉
疾病概念と精神障害   土居健郎
精神衛生の実践面から——病院以外の場で、ケースや家族と接して   佐々木雄司
クレペリンのパラノイア論——精神医学基本問題の形成   内沼幸雄
治療の観点からみた疾病概念——臨床医としての立場から  吉松和哉
統合失調性疾患類型の細分化について   藤繩昭
国際疾病分類と精神疾患概念   加藤正明

初版へのあとがき
解説 村井俊哉

関連リンク