みすず書房

さまよえる絵筆

東京・京都 戦時下の前衛画家たち

判型 B5判 タテ257mm×ヨコ188mm
頁数 216頁
定価 3,520円 (本体:3,200円)
ISBN 978-4-622-08980-3
Cコード C0070
発行日 2021年2月25日
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さまよえる絵筆

1930年代後半、日本の前衛絵画の思潮は最盛期を迎えていたが、開戦にともない表現の自由が奪われつつあった。ルネサンス絵画や日本の埴輪や仏像、庭園などの前衛とは対照的なものの紹介が盛んになる。福沢一郎や靉光、麻生三郎、松本竣介、難波田龍起など東京に暮らす画家たちに加え、北脇昇、小牧源太郎など京都に暮らす画家たちは、西洋古典絵画を思わせる技法で描かれた人物画や静物画、日本の埴輪や仏像、京都の龍安寺の石庭を描いた作品などを次々に発表、日本の前衛絵画は弾圧されたと見なされた。しかし、彼らは西洋や東洋・日本の伝統的な技法や題材に立ち戻ることで時代のリアルな感覚を伝える新たな表現を模索していた。

本書では、戦時下に生きた前衛画家たちがそれぞれに現実を見つめ描いた作品と当時の資料を豊富に掲載する。東京・京都のふたつの都市で育まれた前衛絵画の流れを確認してほしい。同名展公式図録。

目次

はじめに
弘中智子

1940年以後、戦時下の前衛絵画の展開
弘中智子

塗られない画布 転換期・京都の裁断面
清水智世


I 西洋古典絵画への関心
II 新人画会とそれぞれのリアリズム
III 古代芸術への憧憬
IV 「地方」の発見

インタビュー 吉井忠と戦時下、そして東北
吉井爽子
V 京都の「伝統」と「前衛」
義父・小牧源太郎 澄みきった心境
山本新太郎


福沢一郎 古典のレアリズムは前衛に通ず
伊藤佳之

「生きてゐる画家」の世代
河田明久

戦時下の考古学と埴輪の位置
村野正景

難波田龍起の埴輪と仏像 幻想と写真
小林俊介

長谷川三郎における〈前衛〉と〈伝統〉の接続
モダン・フォトグラフィ的視覚言語を経由した抽象表現
谷口英理

「地方」の文化運動
翼賛と現実
大串潤児

2つの共同制作《浦島物語》と《鴨川風土記序説》について
大谷省吾

京都の文化運動と知識人、あるいは、モンタージュの試み
雨宮幸明

戦時下の雑誌における古美術の紹介
『みづゑ』『アトリヱ』および継続誌を中心に
印田由貴子


本書で紹介する画家・団体 相関図

戦時下、前衛画家たちのスナップ写真

用語・人物解説

『美術文化』、美術文化協会画集目次

文献再録

作家作品解説

関連年譜

参考文献

1941(昭和16)年4月5日 福沢一郎逮捕に対する東京・京都の画家たちの反応

作品リスト

An Outline of the Exhibition

おわりに
清水智世