みすず書房

戦時下、占領下の日常

大分オーラルヒストリー

JAPANESE REFLECTIONS ON WORLD WAR II AND THE AMERICAN OCCUPATION

判型 四六判
頁数 344頁
定価 4,070円 (本体:3,700円)
ISBN 978-4-622-08998-8
Cコード C0021
発行日 2022年9月1日
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戦時下、占領下の日常

「晩秋になり、茶屋ヶ鼻橋を渡っていると佐伯湾に連合艦隊の艦船が多数入港しているのが見え、灘山に駆け登って眼下の湾を眺めたことがあります。航空母艦や戦艦、巡洋艦や駆逐艦でびっしりでした」
「山本五十六がひとりで杵築の家を訪ねてきたこともあります。軍服でなくソフト帽をかぶって背広を着て、別府から汽車に乗って駅から歩いてきた。長居はしなかったけれども、やはり昼食をともにして親父のつくったイチゴを食べて帰っていきました」
「焼夷弾で一面焼け野原になり、夜が明けて大分駅から海のほうを見たら建物がまるっきりなかった。不思議なことに私の家と隣のもう一軒だけが残っていました」
「正午に天皇の放送を聞いて気が抜けて寝そべっていました。そこへ突然大きな声で〈みんな起きろ! 長官殿が突っこまれるからただちに爆装をつくれ!〉」
「8月20日ごろだったと思います。別府湾にアメリカ軍が上陸してくるという噂が飛び交った。女性と子どもは逃げろ、ということになり、私の姉ふたりと母親と隣のおばさんの4人が夜の道を50キロ、10時間かけて親戚が住んでいた安心院まで逃げたんです」
真珠湾攻撃最後の演習がおこなわれた佐伯、桜花ほか各種特攻機が集結した「雲の墓標」宇佐、玉音放送後に「最後の特攻」が発進した大分、空襲を免れるも1万ものアメリカ兵を抱えこんだ別府…。日中戦争、太平洋戦争から占領期まで、戦地や国内で敗戦を迎えた兵士たち、銃後に、米軍の間接統治下に生きた人々の貴重な歴史証言。

 

目次

謝辞
はしがき

第1章 すごい、ただもうそれだけ
第2章 一億一心
第3章 大分の男も戦争へ
第4章 戦争は拡大し、人々は戦時体制に
第5章 無敵の日本
第6章 空から火が
第7章 喜んで死にます
第8章 鳴りやまないサイレン
第9章 大きな代償
第10章 すべてを捧げて
第11章 町そのものを消滅させる
第12章 大分出身者が天皇に進言を
第13章 稲妻
第14章 負けたんじゃない、戦争が終わっただけ
第15章 空腹、混乱、そして恐怖
第16章 悪魔が上陸してきた
第17章 悲しい帰郷
第18章 占領が確立する
第19章 ミス別府、クレージーメリー、ウィリアム・ウェストモーランド

終わりに


訳者あとがき

書評情報

清田透
(大分合同新聞論説委員長)
「米国人が聞く大分の戦争」
大分合同新聞 2022年10月23日
御厨貴
(政治学者)
「空襲、進駐…生活のすぐそばに」
東京新聞 2022年11月20日
本郷恵子
(東大史料編纂所教授)
「異邦人が訊く“戦争”」
文藝春秋 2023年2月号