みすず書房

ゾルゲ伝

新資料が語るゾルゲ事件2

スターリンのマスター・エージェント

AN IMPECCABLE SPY

Richard Sorge, Stalin’s Master Agent

判型 四六判
頁数 552頁
定価 6,270円 (本体:5,700円)
ISBN 978-4-622-09548-4
Cコード C1031
発行日 2023年5月10日
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ゾルゲ伝

スパイ小説の母国イギリス発、欧米圏でベストセラーになった稀代のスパイの伝記である。英独日露の新資料を駆使して、歴史的事実だけでなくリヒアルト・ゾルゲと彼をめぐる多くの人々の人間性にも迫る。
第一次世界大戦でドイツ軍に志願入隊、三度負傷したゾルゲは、病院のベッドの上でこの戦争の原因について考えた。除隊後、共産党に入党し、炭坑で活動しながらドイツ革命に加わり、コミンテルンからリクルートされる。
赤軍参謀本部情報本部の諜報員として上海をへて1933年東京へ。駐日ドイツ大使オットの親友のジャーナリストとして大使館内にデスクを持ち、同時に元朝日新聞記者・近衛内閣嘱託の尾崎秀実を中心にした日本人諜報網を形成。ゾルゲは日独の最重要機密を入手しては、モスクワに打電した。
機密情報を携え満州に亡命したソ連秘密警察幹部。第二次世界大戦の結末に大きく影響したノモンハン事件。ドイツのソ連侵攻の裏で、ソ連もドイツ侵攻を計画していた雷雨作戦… 本書では、ゾルゲを基点に日本・ソ連・ドイツの関係が交錯する。一方でゾルゲ諜報団は、日米戦争が不可避であるという分析を開戦の三か月前に導き出していた。
刑場に消える瞬間まで、自然で自発的にふるまうゾルゲには男も女も惹きつけられた。優秀な分析家、クールな嘘つき、大酒のみの女たらし。彼はいったい何に殉じたのだろうか? ゾルゲの成功と孤独は、各自がそれぞれの情報戦を生きる現代人にも示唆に富むだろう。

目次

プロローグ「シベリア人!」
序言

1 「教室から戦場へ」
2 革命家たちの中へ
3 「滅びた世紀の狂信的な有象無象たち」
4 上海での日々
5 満州事変
6 東京を考えたことはあるかい?
7 諜報網がつくられる
8 気がねなきオット一家
9 モスクワ 1935年
10 花子とクラウゼン
11 モスクワの血の海
12 リュシコフ
13 ノモンハン
14 リッベントロップ ─ モロトフ
15 シンガポールを攻撃せよ!
16 ワルシャワの虐殺者
17 バルバロッサが明確になる
18 「彼らは我らを信じてはくれなかった」
19 北進か南進か
20 限界点
21 「今まで出会った中で最も偉大な男」

謝辞
訳者解説

文献
人名索引

書評情報

岩間陽子
(政策研究大学院大学教授・国際政治)
「極東と欧州、同時代の歴史が融合」
毎日新聞 2023年7月22日
井上正也
(政治学者・慶応義塾大学教授)
「大物スパイ 成功と孤独」
読売新聞 2023年8月27日
手嶋龍一
(外交ジャーナリスト・作家)
「戦渦の慧眼」
文藝春秋 2023年10月号「今月買った本」
遠藤乾
(国際政治学者、東京大教授)
読売新聞 2023年12月24日

関連リンク

岸惠子主演『真珠湾前夜』が可能にした学術的ゾルゲ事件研究

加藤哲郎(訳者、一橋大学名誉教授、尾崎=ゾルゲ研究会代表)寄稿

お詫びと訂正

本書第1刷(2023年5月発行)において、軍隊・行政用語を中心に次の誤りがございました。謹んでお詫び申し上げ、ここに訂正いたします。(2023年6月13日)

頁・行
84頁 10行目 ソ連人民戦争委員会 ソ連陸海軍人民委員
191頁 12-13行目 右派的逸脱 右翼的偏向
191頁 14行目 右派的偏向 異端的な方向転換
268頁 5行目 第二航空旅団 第二飛行集団
269頁 11行目 軍事担当補佐官 駐在武官補佐
269頁 11-12行目 主席軍事担当官 駐在武官
304頁 12行目 帝国首相 帝国元帥
308頁 1行目 参謀本部副本部長 軍令部次長
357頁 1行目 人民安全保障委員会書記長 国家保安人民委員
359頁 14行目 参謀本部長 総長
359頁 14-15行目 国防委員長 人民委員
371頁 15行目 海軍外事課 海軍軍務局
409頁 11行目 元帥 大将
437頁 3行目 日本空母空軍 日本海軍航空隊
455頁 6行目 フルシチョフ書記長 フルシチョフ第一書記