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二見史郎『ファン・ゴッホ詳伝』

国立新美術館のファン・ゴッホ展が賑わっているようだ。モナ・リザのような珍しいお客さんは別格として、ゴッホの人気はこの日本ではいつも飛び抜けている。今回の展覧会もその予想を裏切らなかったわけで、めでたい。

ゴッホといえば、日本との関係で、かならず浮世絵が話題になる。かれがこの日本の版画に惚れていたのは周知のことだが、その淵源がどこにあるのか? この問題を突き詰めた研究はなかったのではないか。

本書のユニークな点は、ゴッホ一族と幕末日本の関係から始まっているところであろう。勝海舟の長崎から始まる『ファン・ゴッホ伝』は今までなかった。この先祖との関わりからゴッホと浮世絵の長く深い関係が始まるわけである。

この天才的な画家の中に、いかに深く浮世絵が染みこんでいたか? それは有名な「悲しみ」の画面の左上や「夕日を背に種まく人」の前方にある木がどうも浮世絵の〈梅の木〉を下敷きにしているらしいことからも窺われる。浮世絵は画家の意識のずいぶん底深いところまで影響しているようである。

本書は、画家の神格化や〈天才と狂気〉といった安易なメロドラマに陥ることなく、厖大な手紙を解読し、その人生を時系列に沿って詳細に辿り、その実像を明らかにしている。待望の決定版伝記である。

みすず美術カレンダー 2011 特集「ゴッホの四季」

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