
2013.05.27
ウォルト・ホイットマン『草の葉 初版』
〈大人の本棚〉 富山英俊訳
当世「公立無料貸本屋」事情
2013.05.10
月刊「みすず」の連載として、この本はスタートした。毎回、著者は「枕」を用意した。今回、単行本として通読する読者は、きっとそれらの「枕」がただの「枕」ではないことを発見するだろう。
たとえば――
――まだまだ、たくさん。
ちなみに、ドイツ語しか知らなかったピューリツァーが、貧しいハンガリー移民でありながら、図書館で勉強し、アメリカで功成り名遂げた話は、著者をとても驚かせた。1970年ごろのことだ。当時、日本の図書館の蔵書数は2858万冊、アメリカのほぼ6分の1強で、いまだに日本では、本というものは、基本的に買って読むものだった。
しかし今や、日本の図書館の蔵書数は3億8600万冊。量としては、革命的な変化だが、ただ、これは複本の増加も含んでいて、図書館に対する著者側の批判を呼ぶことにもなる。
その一方で、順番待ちのリストは、信じがたいほどの長さだ。たとえば、2013年2月中旬、著者の住む市の図書館では、村上春樹『1Q84』(上)の順番待ちは490人、湊かなえ『告白』は359人だったという。1年半待ち? あるいは2年? この数字を、いったいどう読み解いたらいいのか。そこにひとつ、鍵がありそうだと著者は考える。
貸本屋をやめたあと、著者は、編集者から始めて、出版界で生きることになる。つねに、独自のアイデアを仕事に結びつける、起業家でもあった。翻訳権を仲介する日本ユニ・エージェンシーや、日本ユニ著作権センターは、そうして生まれた。
結局、「枕」はたんなる「枕」に終わらず、しかも、著者の言う「本にまつわるとりとめない雑感」でもなく、街の図書館に通う、現在の著者を形づくったものだ。
この本の味わい深さ、率直さ、いくつものアイデアの提案は、生まれるべくして生まれたもの、と言えるだろう。
[終了しました] 『知の広場――図書館と自由』の著者アントネッラ・アンニョリ氏が来日され、各地で講演会などが開かれます。
2013年5月25日(土)、せんだいメディアテーク(宮城県仙台市)で開かれる建築家の伊東豊雄氏との対談「知の広場とみんなの家」(司会・通訳 多木陽介氏)をかわきりに、6月14日までの講演ツアー。スケジュールなど詳しくは「イベント情報」でご案内しています。
2013.05.27
〈大人の本棚〉 富山英俊訳
2013.05.10
東プロシアの旅 [写真|池内郁]