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2016.07.25
フランクル『夜と霧』から (8)
読み広げる 2016年夏の読書のご案内
今福龍太『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』
2016.07.15
ソローが生きた時代は、アメリカが急激な産業社会に変容する時期だった。誰もが成功を求め、あらゆるものが貨幣価値に変換されようとするこの時代に、ソローは森に小屋を建ててひとり暮らした。毎日何時間も散歩をして、小さくて誰の目にもつかないような、季節の移り変わりをノートにスケッチした。
世間体とは縁もゆかりもない生活だった。だが、ソローは社会にまったく無関心だったわけではない。むしろその反対で、奴隷制と侵略戦争に対して人頭税の不払いでもって抵抗の意志を示し、投獄されたことはあまりに有名だ。また、ガンジーやキング牧師に影響を与え、非暴力抵抗運動の源泉となったエッセイ「市民政府への抵抗」は、いま読んでも新鮮だ。このエッセイをはじめ、多くの文章は講演がもとになっていて、ソローは短い生涯のなかで、市民に向けて幾度となく講演を行った。
社会への徹底した批判精神と、森の小さなものを見つめるみずみずしいまなざし。それらはどのようにつながっていたのだろうか。
ソローは言っている。「私は「自然」を擁護するため――すなわち単に市民的な自由や教養とは対照的な、絶対的な自由と野生を擁護するために――ひとこと述べてみたい。つまり人間を社会の一員としてではなく、むしろ自然界の住人、あるいはその重要な一部をなすものとして考えてみたいのである。」(『歩く』より。本書80ページに引用)
真の人間らしさと自由を考え抜いたソロー。その実践と思考がはぐくまれた場所を「野生の学舎」と呼んでみよう。すると、そこに見たこともないようなひとつの「学び舎」の姿が現れる。本書はソローの著作や、日記(その悪筆のために100年たってようやく解読されたという)を森を歩くように読み解いて、誰にたいしても開かれているこの学び舎にそっと導いてくれる。
東京・西新宿の朝日カルチャーセンター新宿で、今福龍太(文化人類学者、東京外国語大学教授)を講師に迎え、講座「悲しき熱帯、ブラジル」(全1回)が開かれます。
「不世出の賢者クロード・レヴィ=ストロースの若きブラジル体験を凝縮したみずみずしい傑作『悲しき熱帯』のテクストをあらたに読み直し、そこにブラジル的「サウダージ」(郷愁)を探りあて、私たちの歴史意識を未来への希望へとつなぐための90分」。受講料会員3024円、一般3672円(税込)。
2016.07.25
読み広げる 2016年夏の読書のご案内
2016.07.15
P・B・メダワー『若き科学者へ』鎮目恭夫訳 結城浩解説[新版] [20日刊]