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栩木伸明『声色つかいの詩人たち』

「古い切り抜きを大切にしている。二〇〇三年六月二六日の朝日新聞、この日は木曜日だったらしい。「かんたんになっていいのか短歌は」という記事の中に、あるシンポジウムで発言した二人の歌人、枡野浩一氏と穂村弘氏のことばが引用されている――「枡野氏が「マンガは、作者は大変だけど読者は楽。短歌は読者が持つ再生装置のソフトが優秀でなければ読めない。現代短歌だけがそんなわがままでいいのか」と問うと、穂村氏が「わがままでよくないから、現に一般市場で歌集が流通していない。(中略)むしろソフトの普及に努めなくちゃ」。枡野氏、「そうか、短歌版『ヒカルの碁』みたいなのを作ればいいんだ!」」
この本におさめることになる文章を書きはじめた頃新聞で読んで、思わずマーカーでぐりぐり線を引いてから切り抜いておいた記事だ。短歌ばかりではない、「ソフトの普及」は現代詩にもどうしても必要だと思った。日本語詩にも、英語の詩にも。」(「あとがきにかえて」より)

みなさんは、最近詩を読みましたか。そういえば、学校を出て以来、とんとご無沙汰してるよなあ、でも昔は好きだった。授業で習った詩が頭から離れなくて、ともだちと原っぱで、大声で叫ぶように暗唱していたな、というかた、じつはおおぜいいらっしゃるのでは。『声色つかいの詩人たち』は、そんなかたにこそ、ぜひ読んでいただきたい本です。
『声色つかいの詩人たち』には、たくさんの詩人がでてきます。ほんの一部をご紹介すると、ホメロス、ダンテ、シェイマス・ヒーニー、デレク・マホン、サイモン・アーミテージ、田原、谷川俊太郎、伊藤比呂美、四元康祐、小池昌代……。時代も場所もさまざまな詩人たちを呼び寄せ、対面させ、ていねいに読みほどき、かくれた味わいを引きだしました。谷川俊太郎さんが帯に寄せてくださった、「栩木さんは詩の多国籍料理の三つ星シェフだ。詩の味わいが深くなるレシピ満載の本」という言葉のとおりに。
この「トチギ食堂」においでいただき、お好きなところからつまみぐいしていただくうちに、身体のどこかに埋め込まれた、詩と共鳴するモーターが少しづつ熱くなって、いつしか音を立てて稼働しはじめるにちがいありません!




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