みすず書房

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野田正彰『現代日本の気分』

野田正彰さんの新刊が出来ました。
精神科医/批評家として現代社会を見つづけてきた著者の最新の日本論です。

本書の編集作業が終盤を迎えたころ、大震災が起こりました。
野田さんは、被災地に駆けつけ、現地を歩き、声を聞き、「いま何が起こっているのか」「どう考えればいいのか」思考しつづけています。夕刊に何度か寄稿をしています。

この本は完成に向けて、計画変更をしました。
「東日本大震災――被災者理解へ問われる人間観」「自殺が組み込まれた社会を変えようではないか」などを加えたのです。

この度、編集を終えて、野田さんの思考のブレの無さには、あらためて尊敬の念を強くした次第です。たとえば、以下の収録稿はいずれも大震災以前に執筆されたものですが、正に3・11以後の問題意識と強い共鳴をしています。 

国家を超えた災害支援を/震災と芸術展/チェルノブイリ診察/二十二年後のチェルノブイリ/「すてき」な水爆から五十五年/核実験から宇宙戦争へ/原子炉との対話/被爆者の哲学/四川大地震と住宅再建/自殺対策のつくろい/原爆に生きて

「阪神大震災まで災害復興とは建物と生業の再建と考えられており、やっとあの時、被災者の〈心の傷〉が問題にされるようになった。それは〈心のケア〉ブームになったが、そこでは〈心〉なるものが社会(身体)と分離され矮小化されていた。心身はひとつであり、被災者の悲哀と建物や社会の再建はひとつである。思想なき災害救援も、災害復興もあり得ない」
(「被災地に立って」12頁)




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