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「正義」「自由」をめぐって

ロールズ/ローティ/リオタール他『人権について』ほか[重版・復刊のお知らせ]

「ロールズはまず、功利主義的な原理が選ばれることはないと推論する。無知のベールをかぶっている人はみな、「自分は抑圧された少数派かもしれない」と考えている。大衆の娯楽のためにライオンの前に放り出されるキリスト教徒になるようなリスクは、誰もとりたくないのだ。徹底した自由競争やリバタリアニズムを選ぶ人もいない。このような原理は、市場経済で得た利益を独占する権利を一部の人びとに与えるが、彼らはこう考えるからだ。「もしかしたらビル・ゲイツになれるかもしれない。でもホームレスになる可能性もある。ならば底辺層を切り捨てるシステムは避けたほうが無難だ」」
(マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』より)

大きなイデオロギーが終焉をむかえ、加速度的に進化を遂げる情報化社会のなか、日常生活を生きる個人として、一国民として、世界の中の一人として、何を根拠に「正しい」判断をすべきであろうか?
ファンの嘆きを和らげようと、マイケル・ジョーダンに、連邦議会がバスケットボールへの復帰を強制することは許されるのか、などの具体的な事例を素材に、アリストテレス、ミル、ノージックなど、古今の哲学者の考えを参考にしながら、「正義」とは何かについて論じ話題となった、サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(鬼澤忍訳、早川書房、2010年)。そのサンデルの著書のなかでしばしば言及され、「公正としての正義」について検討を行った、ジョン・ロールズ『正義論 改訂版』(川本隆史他訳、紀伊國屋書店、2010年)。歴史家としての豊かな視点から、市場原理主義に対抗して、これからの「社会民主主義」を提言する、トニー・ジャット『荒廃する世界のなかで』(森本醇訳、小社刊、2010年)。これら、2008年の金融危機後の世界を考えるうえで示唆に富む3冊が刊行されたことを機に、以下の書籍を重版・復刊いたしました。

「公正としての正義」の理念を国際法や国際慣行に関わる正義へ展開したロールズ「万民の法」収録の、ロールズ/ローティ/リオタール他『人権について』(中島吉弘・松田まゆみ訳)、ヒューム、ライプニッツ、カント、ヘーゲルを中心に、道徳哲学の系譜を論じた『ロールズ 哲学史講義』(上下、坂部恵監訳)、多文化主義社会における集団と個人の関係を考察した、マイケル・ウォルツァー『寛容について』(大川正彦訳)、「積極的自由」と「消極的自由」という二つの概念を提示した、アイザィア・バーリン『自由論』(小川・小池・福田・生松訳)、アメリカにおける個人主義の負の側面を分析した、ロバート・N・ベラー他『心の習慣』(島薗進・中村圭志訳)。いずれも、「正義」や「自由」をテーマとした基本文献です。この機会に、ご購読いただけると幸いです。

社会科学書13点 オンデマンド版復刊のお知らせ

亀嶋庸一『ベルンシュタイン』、関口正司『自由と陶冶』、J・S・ミル『ベンサムとコウルリッジ』(松本啓訳)をはじめ、社会科学の分野で著名な思想家についての研究書13点を、12月20日、オンデマンド版にて復刊いたします。




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