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他者の苦しみへの責任

ソーシャル・サファリングを知る

SOCIAL SUFFERING


貧困・難民問題など、社会的につくられる苦しみをグローバルに捉える際、統計の網にかからない実相を捨象するのはあまりにたやすい。数値化の威力ばかりが叫ばれる時代にこそ、「質的な」側面へのアプローチが切実に求められる。
収録の論考は、ハイチにエイズを蔓延させる社会構造(ファーマー論文)、移民が民族と国家を失うプロセス(ダニエル論文)など、社会的につくられる苦しみについての当事者自身による「表現」を掘り起こしつつ、同時にそれをグローバルな視座から位置づけている。「ケヴィン・カーターの写真と同じように「他者の苦しみへの責任」は何らかの形で可視化されなければならない。商品になってしまうことも承知の上で、より強く訴える表現手段を用意しなければならない。この論集もそういう意図から編まれたものだ。」(「解説」より)
特に注目してほしいのは、社会的な苦しみにも「トリアージ」が必要だという、最貧困層の人々の支援を視野に入れたP・ファーマーによる訴えである。本書中でも苦しみに統一的基準を持ち込むことへの懸念を語るクラインマンらの見解との間に緊張が生じており、社会的苦しみをめぐる議論の焦点であることが見てとれる。この問題への定見をもつためにも本書は必読といえるだろう。


目次


序論(アーサー・クラインマン/ヴィーナ・ダス/マーガレット・ロック)

●遠くの苦しみへの接近とメディア●
苦しむ人々・衝撃的な映像――現代における苦しみの文化的流用(アーサー・クラインマン/ジョーン・クラインマン)

●声なき者の表現を掘り起こす/インド・パキスタン●
言語と身体――痛みの表現におけるそれぞれの働き(ヴィーナ・ダス)

●トリアージの必要を問う「極度の」苦しみ/ハイチ●
人々の「苦しみ」と構造的暴力――底辺から見えるもの(ポール・ファーマー)

●医療テクノロジーと人権/日本●
「苦しみ」の転換――北米と日本における死の再構築(マーガレット・ロック)

●移民の苦しみのありか/スリランカ・英国●
悩める国家、疎外される人々(E・ヴァレンタイン・ダニエル)

●抑圧装置の解体●
拷問――非人間的・屈辱的な残虐行為(タラル・アサド)


解説(池澤夏樹)
訳者あとがき
原著の収録論文
執筆者略歴(PDFファイル)ダウンロードはこちら


著訳者略歴

アーサー・クラインマン
Arthur Kleinman

1941年生まれ。ハーバード大学教授(the Esther and Sidney Rabb Professor)、精神科医。ハーバード大学アジア・センター長。2004-2007には、ハーバード大学文化人類学部門の部門長を勤めた。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ジョーン・クラインマン
Joan Kleinman

1939年生まれ。収録論文の執筆時、ハーバード大学文化人類学部門のリサーチ・アソシエイト。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ヴィーナ・ダス
Veena Das

1945年生まれ。ジョンズ・ホプキンズ大学、文化人類学教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ポール・ファーマー
Paul Farmer

1959年生まれ。ハーバード大学医学校、国際公衆衛生・社会医療部門長、医療人類学教授。医師としてボストンのブリガム・アンド・ウイメンズ病院に勤務。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
マーガレット・ロック
Margaret Lock

英国ケント州生まれ。カナダ在住。マッギル大学医療社会学部・文化人類学部教授。カナダ・ロイヤル・ソサエティ会員。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
E・ヴァレンタイン・ダニエル
E. Valentine Daniel

コロンビア大学文化人類学部門教授。自身スリランカ生まれのタミル人であり、南インドおよびスリランカをフィールドとして、社会的暴力と難民問題、プランテーションにおける労働問題に関連する苦しみの研究に従事。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
タラル・アサド
Talal Asad

1933年サウジアラビア・メディナ生まれ。ニューヨーク市立大学人類学教授。オックスフォード大学でPh. D.取得(人類学)。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
坂川雅子
さかがわ・まさこ

1934年、東京生まれ。東京大学大学院(英語・英文学専攻)修士課程修了。桐朋学園大学教授、長野県看護大学教授を経て、現在は翻訳家。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
池澤夏樹
いけざわ・なつき

1945年北海道帯広市に生まれる。1987年『スティル・ライフ』で中央公論新人賞及び第98回芥川賞を、1993年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞受賞。『嵐の夜の読書』(みすず書房)他、著書多数。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

釈徹宗<週刊文春 2011年4月21日号>
堂目卓生(経済学者)
<読売新聞 2011年5月8日(日)>
河合香織(ノンフィクション作家)
<週刊図書館 2011年6月11日号>
小西聖子<毎日新聞 2011年5月29日(日)>
斎藤貴男(ジャーナリスト)
<信濃毎日新聞 2011年7月10日(日>

関連リンク

この本の関連書


「他者の苦しみへの責任」の画像:

他者の苦しみへの責任

「他者の苦しみへの責任」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/304頁
定価 3,672円(本体3,400円)
ISBN 978-4-622-07592-9 C0036
2011年3月22日発行

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