超現実主義の1937年
福沢一郎『シュールレアリズム』を読みなおす
菓子? 擬態? 選択の個性?
自らをシュルレアリストではないと言い放った画家・福沢一郎(1898-1992)は、戦争で時代が暗転しつつある1937年、何を発信しようとしたのか。気鋭の研究者たちが精読と調査、思考を積み重ね、知と美の巨人が著した奇書『シュールレアリズム』にいまこそ挑む。膨大な註釈により奇書を解剖し新たな知見により謎を発掘する研究の成果、遂に刊行。[生誕120年記念]
目次
はじめに 伊藤佳之
研究会の概要と原著の構成 伊藤佳之
第1部 原著編 福沢一郎『シュールレアリズム』
序
I 超現実主義の意義及びその史的展開
II 超現実主義と絵画
III 超現実主義の先駆
IV 超現実主義とレアリズム
V 超現実主義と抽象芸術
VI ヒユマニズムへの一瞥
VII 描かれた人間
VIII 超現実主義と日本的なもの
IX 日本における超現実主義運動
X 超現実主義の将来
第2部 論文・資料編
第1章 原著読解
I あまりに率直な思想史概観 伊藤佳之
II ソビー、レヴィ、福沢の「選択の個性」 弘中智子
III NY発、最新の展覧会から歴史を紐解く 春原史寛
IV レアリズムへの対峙及び思想的拡張 小林宏道
V 『キュビスムと抽象芸術』からの選択と再配置 谷口英理
VI 「新ロマン主義」はなぜ「変換」されたか 伊藤佳之
VII 危機の時代をあらわすならば 伊藤佳之
VIII 日本文化との対比と考察――俳諧、禅など 小林宏道
IX シュルレアリスム絵画の見取図と展望 大谷省吾
X ダリ、ブルトンから次世代の画家たちへ 弘中智子
第2章 原著の図版について 伊藤佳之
第3章 編集会議から……原著と「1937年」の意味
1937年の福沢一郎――社会・美術・展覧会 伊藤佳之
再現と非再現、および写真的なイメージをめぐって 谷口英理
福沢一郎『シュールレアリズム』と瀧口修造『近代藝術』 大谷省吾
1937年・福沢一郎を取り巻く思想と世界情勢 小林宏道
『シュールレアリズム』以後――次世代の芸術家たち 弘中智子
資料編
関連年表 伊藤佳之[編]
参考文献 弘中智子[編]
あとがき 大谷省吾
事項索引
人名索引
図版一覧
福沢一郎 略年譜
著訳者略歴
- 伊藤佳之
- いとう・よしゆき
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筑波大学芸術専門学群芸術学専攻卒業。富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、群馬県立館林美術館学芸員を経て、2012年より福沢一郎記念館非常勤嘱託。
「生誕100年記念 福沢一郎展」(1998年、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館)、「夢のなかの自然 昭和初期のシュルレアリスムから現代の絵画へ」(2006年、群馬県立館林美術館)などを担当。主な論考に「ニューヨークの『戦後日本の15人』展について 福沢一郎の「Hiroshima」と呼ばれた作品群を中心に」(「群馬県立館林美術館研究紀要」第5号、2008年)。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 大谷省吾
- おおたに・しょうご
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筑波大学大学院博士課程芸術学研究科中退。1994年より東京国立近代美術館に勤務、2016年より美術課長。
同館にて「北脇昇展」(1997年)、「地平線の夢 昭和10年代の幻想絵画」(2003年/第16回倫雅美術奨励賞受賞)、「生誕100年 靉光展」(2007年)、「麻生三郎展」(2010年)、「生誕100年 岡本太郎展」(2011年)、「瑛九1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす」(2016年)などを担当。2014年筑波大学より博士号(芸術学)取得。主著『激動期のアヴァンギャルド シュルレアリスムと日本の絵画1928-1953』(国書刊行会、2016年)。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 小林宏道
- こばやし・ひろみち
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多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。多摩市文化振興財団(パルテノン多摩)学芸員を経て、1994年より多摩美術大学美術館学芸員。
「ケーテ・コルヴィッツ展」(1992年、パルテノン多摩)、「福沢一郎は今日から歩き出す」(2008年、多摩美術大学美術館)、「SOUL@AFRICA リンクするアフリカルチャー」(2011年、多摩美術大学美術館)、「宮崎進 すべてが沁みる大地」(2017年、多摩美術大学美術館)などを担当。また「アジアを抱いて 富山妙子の全仕事展1950~2009」(2009年、越後妻有アートトリエンナーレ)も手がける。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 春原史寛
- すのはら・ふみひろ
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筑波大学大学院博士後期課程人間科学研究科修了。博士(芸術学)。2001年から2006年、財団法人大川美術館学芸員。2009年から2011年、山梨県立博物館学芸員。
2012年、山梨県立博物館学芸員、2013年から2018年、群馬大学教育学部美術教育講座准教授。2018年9月から武蔵野美術大学芸術文化学科准教授。主な担当展覧会「小林一三の世界展 逸翁美術館の名品を中心に」(山梨県立美術館、2010年)、「浅川伯教・巧兄弟の心と眼 朝鮮時代の美」(山梨県立美術館、2011年)、「岡本太郎と『今日の芸術』」(アーツ前橋、2018年、企画協力)。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 谷口英理
- たにぐち・えり
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東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。東京藝術大学非常勤講師、大妻女子大学非常勤講師を経て、2011年より国立新美術館に勤務、2015年から同美術資料室長。
主な論文に「長谷川三郎における内在化された〈写真〉 主に1936~40年の制作、言説に関する考察」(「美術史」185冊、2018年)、「戦後美術関係資料の収集・受入れに関する考察 “資料群の断片”ではなく“アーカイブズ資料”へ」(「美術フォーラム21」35号、2017年)等。共著に『「光画」と新興写真モダニズムの日本』(国書刊行会、2018年)、『幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界』(国書刊行会、2012年)など。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 弘中智子
- ひろなか・さとこ
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一橋大学大学院言語社会研究科博士課程単位取得退学。2006年より板橋区立美術館学芸員。
「新人画会展」(2008年)、「福沢一郎絵画研究所展 進め!日本のシュルレアリスム」(2010年)、「池袋モンパルナス展」(2011年)、「東京⇔沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村展」(2018年)などを担当。主な論考に「井上長三郎の1930年代 シュルレアリスムと社会への意識」(「武蔵野美術大学研究紀要」47号、2017年)。2018年、一橋大学より博士号(学術)取得。
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関連リンク
- [トピックス]ウェブ上「編集後記」対談 伊藤佳之(福沢一郎記念館)/弘中智子(板橋区立美術館) /topics/08773/
この本の関連書
「超現実主義の1937年」の画像:
「超現実主義の1937年」の書籍情報:
- A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/424頁
- 定価 7,480円(本体6,800円)
- ISBN 978-4-622-08773-1 C1070
- 2019年2月25日発行