みすず書房

『丸山眞男話文集 続2』

丸山眞男手帖の会編[全3巻]

2014.07.24

「ご紹介にあずかりました丸山でございます。只今お話がありましたように、実は私どものほうでもと申しますか、私どものほうがやや早く、数ヵ月間にわたる紛争が続いておりまして、こういうことになりますと、大学の教師は精神労働に比して肉体労働の比重が圧倒的に多くなりまして、まず教師の第一の資格は体力、最後の資格が知力というのが現在の実感でございます。」
(『丸山眞男話文集 続2』「福澤諭吉――近代日本の人物像」)

この7月19日に放送された、NHK Eテレ(教育)戦後史証言プロジェクト「日本人は何をめざしてきたのか」の第3回「丸山眞男と政治学者たち」(再放送は金曜深夜〔26日(土)〕0:00-13:30。NHKオンデマンドでも配信予定)。丸山眞男の生涯と時代状況と思想の重なりがうまくまとめられ、その著作の編集のお手伝いをしてきた者にとっても、新しく気づかされたことが多かった。番組中、丸山眞男手帖の会・代表の川口重雄が保管するカセットテープから丸山の肉声を聞くことができたが、弊社刊『丸山眞男話文集』全4巻、『丸山眞男話文集 続』全3巻予定には、そのような語られた言葉が多数収録されている。

その1冊、『丸山眞男話文集 続2』を、この度刊行したが、番組で紹介された内容に通じる話が随所で語られている。
冒頭引用した、東大紛争中の慶應大学での講義では「私は討論は何時間でも別の機会にする。……日本国中の内乱の際でさえ福沢諭吉は講義をやめなかった。その時に比べれば東大の紛争などは子供のけんかのようなものである。」(「福澤諭吉――近代日本の人物像」)と述べ、紛争と距離をとった冷静な態度を表明している。
また、民主主義の永久革命を「民主主義と言うと、猫も杓子も民主主義になる。それに対して迷う人は、さっき言ったような意味じゃない本当の意味での内発的、自分の内側から出たものになるかということを考えているんです。しかしそれはなかなかならないという覚悟を持たないとできないの。気を長く持ってやる以外ないんですね。」(「人権からみた日本」)と表現している。
紛争後、東京大学を退職し、大学の外で市民に語り続けたエピソードとして「東京女子大の中にある幼稚園のお母さん方のグループが僕の話を聞きたいと言って来ました。園長も一緒に来ました。園長は僕の女房と同じぐらいの歳で、僕の次男は東女の幼稚園に通っていましたから。驚いたことに一年余りを費やして『「文明論之概略」を読む』を読んだというんです。」(「『著作ノート』から長野オリンピックまで」)を挙げ、自分にとっても有意義な集まりであったと述べている。

この番組をごらんになって、丸山の著作をこれから読んでみたいとお思いの方には、わかりやすく自らの思想を語った『丸山眞男話文集』『丸山眞男話文集 続』を入門として、おすすめいたします。