みすず書房

『丸山眞男話文集 続4』

丸山眞男手帖の会編 [全巻完結]

2015.06.10

「丸山の遅筆ぶりはしばしば言及される。当人も自嘲する。それと対照をなす会話のスピード感もつとに指摘されてきた。山田が圧倒された諸「理論」の瞬発的な組合せによる「体系」構築(と解体)はその好例といえそうだ。座談会や講演の膨大なアーカイブ類から垣間見ることもできる。談話の才気が時事評論と親和性をもった。」
(大澤聡「アカデミズム、ジャーナリズム、ディレッタンティズム」、『現代思想』2014年8月臨時増刊号「丸山眞男」所収)

本巻、最晩年の座談・スピーチを収録した『丸山眞男話文集 続4』においても、「僕はどうもしゃべりすぎなんだな。いつもあとでイヤになっちゃう。もっと聞いておけばよかった」とのこと、丸山による瞬発的な「体系」構築がうかがえる発言が満載である。そしてこのスピード感は、会話だけでなく、本巻収録の書簡にもうかがえる。

「私は社会主義こそ歴史的に一つの段階を代表する体制と思想であり、これに反していわゆる「市民」的民主主義はギリシャの昔からあって、社会主義をのりこえても生きつゞける――というよりは永遠に制度化を完了しないプロセスと思っています。」
(埴谷雄高宛1961年12月1日)

「私は歴史をやっているせいか、また、戦中・戦後の激動期をくぐって、その時々の風潮のたよりなさを痛感しているせいか、すべて物事を十年から百年単位で考えることにしています。」
(杉井健二宛1969年11月9日)

「「戦後」の厄介さは光と闇とが分ちがたく結びあい、もつれ合っていて、光だけをひきはがして残しておくというわけには行かないところにあるのではないでしょうか。」
(野間宏宛1982年5月20日)

いずれも、相手からの問いかけに対して、時事と歴史を踏まえたポイントを衝く発言を行っている。
座談会や講演のアーカイブとしての『丸山眞男話文集 続』も、本巻にて全4巻完結する。『丸山眞男集』未収録の弔文・アンケート回答・読後評・インタビューも収め、盛沢山な完結にふさわしい内容となっている。