みすず書房

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『テクノロジーとイノベーション』

進化/生成の理論
W・ブライアン・アーサー 有賀裕二監修 日暮雅通訳

「どの産業においても、収穫逓増のメカニズムは、収穫逓減のメカニズムと並んで存在している。しかし、おおまかにいって、収穫逓減は昔からある旧式経済、つまり加工産業で広く見られるものである。それにたいして収穫逓増は新しい領域、つまり知識ベースの産業を支配している。こうなると、経済学はお互いに関連し結びついたふたつの部分、すなわち、どちらの産業をあつかうのか、つまり収穫逓増と収穫逓減のどちらをあつかうのかによって、分かれざるを得ない。ふたつの世界は異なる経済学を必要とするのだ。これらの産業は、行動様式、文化において異なる。さらに、求められるマネジメント技術、戦略、政府の規制も異なる。まったく異なる理解が必要なのである」
(W・ブライアン・アーサー「収穫逓増と産業のふたつの世界」『ハーバード・ビジネスレビュー』74号、1996年)

製造業を中心とした、加工プロセスを核とする旧産業から、デジタル化以後の新産業への転換。それにともなう、iPadなどのさまざまなデバイスの登場と、web上でのクラウド化などの新サービスの誕生……これらの生成と発展のメカニズムを、はじめて体系的に記述した、というのが本書である。

なにしろ、経済学にさまざまな新概念を持ち込んだ大先生の著作であるから、〈ドメイン〉〈モジュール性〉〈再帰性〉等々、聞きなれない用語が多い。ただし、だまされたと思って読んでみていただきたい。読み終わったあとには、「ああ、なんで iPhone が生れたのかわかったぞ」と自分なりの考え方が得られること請け合いである。

「シリコンバレーで動いている数億ドルという金は、アーサーの考え方に基づいている」(ジョン・シーリー・ブラウン)

メタレベルでデジタル時代の先を読むための、新たな洞察の誕生。




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