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外山滋比古『失敗の効用』
就職活動や入学試験でバタバタしている時季である。あまり先のことは考えずに、まずはどこにでもと思っている人もいよう。人情である。
外山先生からお聞きして、記憶に残っているエピソードを一つ。学生時代に、ラテン語かギリシア語の授業があって、その指導教官がT先生であった。たぶんT先生はそのとき非常勤講師で、聴講する生徒の数が少ないと、その講義はなくなってしまう。失業の危機である。そこで、生徒たちは頑張って出席したという。このT先生はやがて京都大学に招かれて、日本を代表する学者・プラトン研究者として多くの業績を遺した。
このT先生の言にいわく――
あまりはやくいいところに就職してしまうと、その人は将来伸びませんネ。
ともかく、うまく受かればいいが、受からなくてもこうした意見があることを思い出そう。
外山先生の言にいわく――
私は入学試験を三度受けて二度落ちた……人間、失敗してはじめてわかることがいくらでもある。

