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2014.01.10トピックス

松尾尊兊『大正デモクラシー期の政治と社会』

今からほぼ1世紀前の1918年半ば、第一次大戦による好景気のなかで、日本資本主義の内部矛盾も深刻化していた。米価が突然暴騰し、売り控えが加速した9月から12月までは、相場が立たないほどだった。閉めている米屋の打壊しなど、米騒動は全国に広がり、騒然となる。

大正デモクラシーは、1920-30年代の民主主義的、自由主義的な運動・潮流の総称とされる。米騒動は、そのひとつの発火点だった。しかし、この機運に対処しようとする政府・官憲側の動きも顕著で、当時の政治・社会状況は複雑に進行した。

1922年には、社会運動取締法案が国会に上程されたものの、会期末にもつれ込んで廃案となる。1925年には、最初の治安維持法が成立する。この法律はその後、1928年に改正され、太平洋戦争に突入した1941年にはさらに全面的に改正され、ポツダム宣言受諾にともなって廃止された。

治安維持法は、これ以降、ことあるごとに引合いに出されるようになる法律だが、本書は、いわばその原点の時期の、政治と社会の研究である。1918年に京都地方に始まり、全国に波及した米騒動が、官憲側の細かい対応もふくめて立体的に論じられる。つぎに当時、社会運動の中核をになった日本共産党の動向。1922年の社会運動取締法案はなぜ流産し、25年の治安維持法の成立はどのような経過をたどったのか。そして最後に、現在では当たり前のように論じられる政党政治が、この時期になぜ、どのように誕生し、結果として混沌とした政治状況に繋がっていくのか。

この時期にかんする著者の問題意識は、長い研究生活をとおして一貫している。内外の、そして地方の史料を掘り起こし、ていねいに比較考証し、この記念碑的な労作は生まれた。
「問題意識だけでは歴史は書けない。できるだけ多くの史料をたんねんに読み、そこからおのずと浮かんでくる自分の考えを先ず尊重し、既存の学説にとらわれないことを心がけた」(「はしがき」より)。
緻密な実証と解読から生まれる緊張感を、読者はすみずみにまで感じ取るだろう。


(664頁・函入)



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