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2017.09.08トピックス

「コード・ブルー」のシーズン3が素晴らしい……若き研修医ガワンデ

アトゥール・ガワンデ『予期せぬ瞬間――医療の不完全さは乗り越えられるか』

毎週月曜夜9時から放送中のドラマ「コード・ブルー」のシーズン3が素晴らしい。

毎話ドクターヘリ出動要請の電話がけたたましく鳴り響き、救急外来の医師や看護師たちはすぐに平然と緊張状態に突入する。運ばれてくる患者の情報を動きながら瞬時に咀嚼し、何を(準備)すべきかを考える。

スタッフのなかにはうろたえる者もいる。
気道挿管に手間どる医師もいれば、乗り物酔いする医師もいる。妊娠初期の看護師もいれば、家庭の事情で休職する医師もいる。

病院で働く人たちも人間なのだ。私たちが訪れる病院の人たちも、高学歴だが新卒だったり、まったく土地勘のないところに赴任してストレスで胃炎になっていたりする。
ひょっとしたら喉が痛いだけで受診した私より、病院のスタッフのほうが心も身体もよっぽど重症のことが多いのかもしれない。

このドラマは私たちが大事なデートの日にかぎって喉が痛くなるように、医療の現場も思い通りにいかないのだと学ばせてくれる。
ドラマの感想をガワンデ風にまとめてみよう。
医療が完全な科学の上に成り立っているとしても、医療行為を行う人間は不完全だ。ただし、ひとつだけ完全で確かな事実がある。それは、ガッキーは踊らなくてもかわいいということだ――。

さて本書は、全米で90万部以上を売り上げたベストセラー『死すべき定め』の著者、アトゥール・ガワンデが研修医時代に書いたデビュー作である。

ドラマ「コード・ブルー」の寡黙な脳外科医に劣らぬイケメンのガワンデだが、残念ながら本作の彼は「うろたえる者」だ。
はじめての静脈注射がうまくできず、太りすぎなんじゃないか、と肉付きのいい患者のせいにする。またある日は、足に8センチのネジが刺さって運ばれてきた患者に「わあ、これは痛いでしょう」なんてアホみたいなことを言う。

ドラマに通ずるハイテンポで描かれる医療現場。
うろたえる、医師になりたてのガワンデ。
『死すべき定め』の成熟したガワンデを知っている私は、その苦闘を、なぜか甥っ子の成長を見守るような気持ちで見つめた。
そして今度病院に行ったときは、たとえ新卒でも胃に炎症がある医師でも、信じて頼ろうと思った。

月曜夜9時が待ちきれない方も、『死すべき定め』に感銘を受けた方も、きっと若き日のガワンデの姿に惚れてしまうにちがいない。




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