みすず書房

トピックス

『大隈重信関係文書』 9

はと―まつ 早稲田大学大学史資料センター編 [3月1日刊][全11巻]

大隈重信に宛てた書翰六千通あまりを翻刻・編纂し、公刊するシリーズの第9巻。

本巻には、鳩山由紀夫の曽祖父にあたる鳩山和夫の書翰31通にはじまり、「全集」未収録のものも含む福沢諭吉の書翰22通、福地源一郎や穂積陳重、前島密74通、牧野伸顕、益田孝、さらに松方正義が大隈に宛てた99通におよぶ書翰など、198名・808通を収録する。

当り前のことだが、これらの書翰のなかには、あまり知られていないが重要なものが数多く眠っている。たとえば、元経済研究会顧問で、朝鮮国境方面調査にかかわっていた日戸勝郎が大隈重信に宛てた「明治40年8月(消印)26日」の書翰には、次のような文面がみられる。

  • 「○閣下も御承知に候はんか宋秉畯なる似非政治家が今の政治の中心点となり、統監の威勢を笠に着て宮中府中専横至らさる無く、近頃も自家の政敵を根絶せんとの盲目政略よりして一進会以外の政社団集は一切解散すべしとの愚案を立て、先つ自強会同友会なる者を解散せしめ候。統監不在中刀筆の俗吏は将来の結果も目前の影響も考察せぬ者と見へ、宋輩の言ふ儘に解散致候は是非なき次第。○左なきだに現政府の行動に業を煮せし全韓人民は今次愈々激昂し、基督教青年会の庇陰に投して新政反対を鼓吹する準備中に候。○叢の為めに雀を駆る者は鸇なりと云ふが、英米野心家の為め及ひ排日気勢助長の為めに韓人を駆る者は現政府の政治にして、統監府の小役人共が実に之れを翼賛し居るは嘆息の外なく候。」

これは第三次日韓協約当時の韓国における政情を述べたもので、日本側の実情に触れた珍しい資料である。なお「統監」とは、伊藤博文のこと。

このように、このシリーズは日本近代史の重要局面への貴重なものから、当時の文化・生活を知るためのものまで、大隈に宛てた書翰から時代を読みとる資料集である。全11巻。




その他のトピックス