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2014.08.25トピックス

神谷美恵子『うつわの歌』

[新版]

神谷美恵子(1914‐1979)生誕百年を記念して、このたび、詩と訳詩をまとめた『うつわの歌』[新版]を刊行しました。1989年刊行の旧版を新編集・増補したもので、晩年に書かれた詩など単行本初収録作14編が加わりました。最晩年1979年に綴られた3編「TIA」「絶望の門」「残る日々」も含まれています。

このうち「絶望の門」は、若き日の「うつつならぬ愛」をめぐる長編の詩です。草稿の状態で遺された原稿はご家族によって大切に保管され、これまで公にされることはありませんでした。「うつつならぬ愛」の対象は、家族ぐるみで付き合っていた野村胡堂一家の長男・一彦。互いに思いを打ち明け合うこともない、ただただ、魂だけが結びついていたかのようなプラトニックな愛は、結核に罹患した一彦の死によって断ち切られます。それは美恵子にとって、「私の天地は崩壊した」(「絶望の門」より)ほどの衝撃でした。

晩年にあって、自分の進む道を決定づけた青春の出来事を振り返った、神谷美恵子を深く知るうえで、きわめて大切な作品です。(私ごとですが)編集作業を進める過程で初めてこの詩を見せていただいたとき、こみあげてくる興奮を抑えることができませんでした。神谷美恵子のなまの感情や逡巡を読者の皆様にもじかに感じていただきたく、巻頭口絵に原稿(冒頭二枚)をおさめました。

巻末には二つの追悼文、モートン・ブラウン「美恵子さんの思い出」(中井久夫訳)、神谷宣郎「神谷美恵子 人間として妻として」を収録しました。

「そう、美恵子さんの現実感覚は一種の定数であった。『現実をまっすぐにみつめる』彼女の能力はついに失せることがなかった。(略)私の知るかぎり、精神と物質とを結合して一個の有機的全体としたひと、それも美しくしかも有効性を失わずになしとげたひとは美恵子さんをおいてはない」(モートン・ブラウン)

「彼女の一生には多くの紆余曲折があった。限界状況とも言えるような大きな困難に見舞われたこともいくたびかある。しかし彼女の一生は、常に人間を超えたものに対する信頼と礼讃で貫かれていた。最後までこの世の自然の美しさに対する観照と、人の心の愛に生きようとした」(神谷宣郎)

いずれも、神谷美恵子の実像を伝えて、代わるもののない文章、ぜひお読みいただけたらと思います。

dede



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