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2019.09.26トピックス

未知なるものの科学――進化生物学者がアリストテレス「動物誌」を検証

アルマン・マリー・ルロワ『アリストテレス 生物学の創造』森夏樹訳[全2巻]

古典を読もうとすると、これは現代科学の視点から見れば信用に値しない誤情報ではないかという疑念が頭をよぎる。だから現代の科学者が古典を検証する本があると、つい手にとってしまう。

このたび9月に発売された『アリストテレス 生物学の創造』は、ロンドンの名門インペリアル・カレッジで教えている進化生物学の教授が『英訳アリストテレス全集』の第4巻「動物誌」を丹念に読み、その内容と現代科学の繋がりを論じた本だ。担当編集者から「アリストテレス、相当すごい」と聞いていたので、何がすごいのかを確かめたくなって読んだ。

ひとことで言うとアリストテレスの凄味は「経験的世界から真理を抽出する方法を知っていた」ということに尽きる。現代に生きる私たちは、膨大なデータや実験を通じて初めて得た情報だけを「正解」と信用している所があると思う。でも2400年前を生きたアリストテレスに便利な科学技術はなかった。自分で浜辺を歩き、捕まえた海洋生物を解剖し、仲間と議論し、理論をまとめて体系をつくった。その結果は、21世紀の科学的検証にも耐えうるほど「当たっていた」。

これはとても重要な知らせだと思う。私たちの頭というか認知能力には限界があるので、どんなに技術が進歩しても「未知」は消えない。重要なのは道具やデータを完璧に集めることではなくて、各々が「科学的態度」で物事に当たること、これしかない。正解のはっきりしない問題に向き合うための鍵は、身近な自然をもっとよく観察することにある。そう教えてくれる本です。大著ですが、12時間くらいあれば読了できると思います。

(営業部・河波)




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