みすず書房

イギリス人も知らなかった「イギリスらしさ」

ケイト・フォックス『さらに不思議なイングリッシュネス――英国人のふるまいのルール 2』北條文緒・香川由紀子訳

2020.01.24

「この10年に起こったいろいろなこと――テロや経済危機、ロンドン・オリンピック、SNS……でも、イギリス人はイギリス人のまま」
大ベストセラーとなった『イングリッシュネス』の初版刊行から10年後の2014年、新版の刊行にあたって、ケイト・フォックスはこんなふうに言っている。
それから今日までにも、ブレグジットあり、ヘンリー王子のロイヤルウェディングと王族の称号返上あり……

変化の波をかぶりながらも、イギリスらしさ――イングリッシュネスの核は変わらない。
1758年にサミュエル・ジョンソンは言った。
「二人のイギリス人が出会ったら、まずするのは天気の話」
イギリスの調査会社ICMの2010年の報告。
「イギリス人は、平均して一生のうち6カ月を天気の話に費やしている」
そして今日も、イギリス全土で彼らは天気を話題にしていることだろう。

本書は、参与観察、インフォーマントへのインタビューによって、そのイングリッシュネスの基本ルールがどう発動されるかを具体的に検証しながら、私たちの知らなかった(そして、イギリス人も知らなかった)本当の「イギリスらしさ」を、さらにしっかりと摑んでゆく。

彼らが愛してやまない「自分の庭」の実態が、イングリッシュ・ガーデンの神話を粉砕し、
おしゃれな部屋のインテリアが、白いオールドローズの咲く庭が、その家の主の意外な階級を物語る。
一人あたりの新聞の発行部数が、他の国にくらべて抜きん出て多いイギリス。それには実用的なあるわけがあった。
イギリス人男性の口からこの一言が出たら(状況と口調によっては)結婚を申し込まれたも同然……が、外国人女性はそれをけっしてプロポーズとはとらないだろう。
謙遜を旨とし、お金の話、自慢が大顰蹙をかうこの国で、彼らは自社製品をどう宣伝し、自分をどう売り込むか。
イギリス人があれほどまでに犬をかわいがり、甘やかすのには、本人たちも知らない、隠れた理由が……

アイロニーとユーモア、偽善と礼儀、抑制、自嘲、きまりの悪さ、フェアプレイ。
人気社会人類学者が「最も奇妙な、最もわけのわからない、イギリス人という部族」を内側から斬る。