みすず書房

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『丸山眞男話文集』刊行開始

[全4巻・5月下旬より]

遺された言葉の最後の集大成

『丸山眞男話文集』全4巻を2008年5月下旬より刊行いたします。

すでに『丸山眞男集』『丸山眞男座談』『丸山眞男講義録』『丸山眞男書簡集』『丸山眞男回顧談』が刊行されているなかで、季刊雑誌『丸山眞男手帖』掲載の丸山の言葉をまとめた、最後の集大成となるこのシリーズ名を決めるにあたっては、紆余曲折がありました。「丸山眞男手帖の会」の設立の主旨として「当会は1996年に設立され、97年4月の創刊以来、雑誌『丸山眞男手帖』を発行してきました。そもそもの発端は、96年8月にさかのぼります。8月15日に丸山先生が亡くなられた後、丸山先生が私共に話をして下さったさまざまな事柄をこのまま埋もれさせるのは余りに惜しい、幸いテープに録音したものがあるので、それらを起こし発表することができたら、と考えました」(丸山眞男手帖の会ウェブサイト)とあります。
http://members3.jcom.home.ne.jp/mm-techo.no_kai/index.html
その後『丸山眞男手帖』(現在も継続中)は、未発表のテープ起こしによる講演・座談・インタヴューに加え、既刊書には未収録の、試験答案、講義要旨、弔文を発掘、記録してきました。本シリーズの企画にあたり、当初は『丸山眞男遺文』というタイトルで編集作業をスタートしたのですが、「文章よりも、語ったものが大部分を占めている」「丸山のいうダベリ=ダイアローグの精神をタイトルに反映したい」という意見も出て、『丸山眞男話文集』となりました。国会図書館のデータベースで検索した限りでは、個人の著作シリーズで『~話文集』と銘打ったものは、過去に例がなく、落ち着きがありながらも新鮮な響きで、という思いも込めています。

丸山眞男 早稲田大学自主ゼミナールにて

「ナショナリズムの問題でいうと、進歩派の方は、今ある基地を撤廃し、安保条約の改正で現在アメリカの政策下にある日本を独立させる、そういうシンボルがある。そういう撤廃という、いわば消極的スローガンで訴えているんだな。」(戦後日本の精神状況)

「もちろん国権論でありますけれど、その論理の底にバックルから学んだ「惑溺」、軽信軽易に対する懐疑の精神というものが逆に跳ね返って、バックルおよび広くは西洋文明、西洋列強に対する批判というものを、西洋にイカレるのもまた「惑溺」なんだということを、導き出す方法的根拠になったんじゃないかというのが、私の推察の一つであります。」(福沢における「惑溺」という言葉)

というように時代状況に向けられた批判的な視点、先人や古典への深い読解が、生き生きと語られる『丸山眞男話文集』をお届けいたします。

【シリーズ概要】
  • 各編の冒頭に背景を説明した解題を、各編の末尾に詳細な注を付す
  • 第4巻末に人名索引を付す
  • 2008年5月 第一回配本・第1巻 定価4830円(本体4600円) ISBN978-4-622-07381-9
  • 巻数順に、3カ月ごとの刊行予定
  • 四六判・上製・各巻平均500頁
【各巻目次】
第1巻
I 現状維持(status quo)と「現状打破」(1936年頃)/?山政道教授行政学試験答案(1937年3月)/ホープに就て(1946年12月)/復古調をどう見るか(1953年12月)/満五才(1956年6月)/お茶の間政談(1959年12月)/六〇年安保への私見(1960年7月)
II 聞き書き 庶民大学三島教室(1980年9月)/十九世紀以降欧洲社会思想史――特に独逸を中心として(1946年2‐4月)
III 1950年前後の平和問題(1977年5月)/南原先生と私――私個人の戦中・戦後の学問の歩み(1977年10月)/法・政治・人間――丸山先生と語る(1977年10月)/大山郁夫・生誕百年記念に寄せて(1980年11月)IV 戦後日本の精神状況――『現代政治の思想と行動』をまとめるにあたって(鼎談 石田雄・藤田省三 1956年10月)/二十四年目に語る被爆体験(1969年8月)
第2巻
I 中国古典における「異端」の字義をめぐって――天国からの衛星中継による[テレビ]討論(1976年)
II 日本の思想と文化の諸問題(1981年10月)/第4回大佛次郎賞 受賞インタビュー・受賞スピーチ(1977年9月・1977年10月)
III 早稲田大学 丸山眞男自主ゼミナールの記録 第1回(1983年11月)/早稲田大学 丸山眞男自主ゼミナールの記録 第2回(1985年3月)/リッターリッヒカイト〔騎士道精神〕をめぐって――ヴェーバー・ニーチェ・丸山(1988年5月)
第3巻
I 闇斎学派の内部抗争(1980年1月)/江戸時代における「異端」の意味論(1982年6月)
II フルトヴェングラー――音楽と政治(1960年9月)/ある日のレコード・コンサートの記録――モーツァルトからスターリニズムまで(座談 中野雄・梅津時比古・天満敦子 1992年3月)
III 『忠誠と反逆』合評会 コメント(1993年4月)/伊豆山座談(座談 安東仁兵衛・筑紫哲也・島田紀子 1994年8月)/慶應義塾大学 内山秀夫研究会特別ゼミナール 第2回――丸山眞男先生をお招きして(1979年6月)/丸山眞男を囲む或る勉強会の記録(座談 安東仁兵衛・石川真澄・岩見隆夫・筑紫哲也 1981年6月)/丸山先生を囲む会(1988年11月)/「丸山ゼミ有志の会」懇談会 スピーチ(1995年12月)
第4巻
I 福沢諭吉の「脱亜論」とその周辺(1990年9月)/福沢における「惑溺」という言葉(1984年4月)
II 伊豆山での対話(1988年6月)/「権力の偏重」をめぐって(鼎談 安東仁兵衛・區建英 1988年8月)/中国人留学生の質問に答える1(1988年10月)/中国人留学生の質問に答える2(1989年6月)
III 秋陽会記――主権国家・世界秩序・二一世紀の人権問題(座談 安東仁兵衛・間宮陽介・恒成和子 1991年11月)/『戦後日本共産党私記』出版記念会における挨拶(1977年4月)/「安東仁兵衛の会」発足記念パーティにおける挨拶(1978年12月)/旧制最後の学生 中瀬信治追悼(1979年6月)/木村先生の思い出(1979年10月)/副島種典追悼(1991年5月)/寺田熊雄追悼(1996年3月)
(第2‐4巻は、各編の構成・標題が変更される場合がございます)



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