みすず書房

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『被災地を歩きながら考えたこと』

五十嵐太郎

「被災地をまわりながら、大船渡のリアスホールや石巻の宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)など著名建築家が設計した文化施設が避難所として機能しているのを見て、非常時に建築が発揮した力に勇気づけられる場面もあった。しかし、ビルが横倒しになったらしいという断片的なニュースを聞いて訪れた宮城県の女川町で言葉を失った。8割の建物が被災し、カオスというべき無茶苦茶の風景である。呆然としながら、廃墟になった街を1時間ほど歩くと、だんだんと異常な壊れ方をしているビルの存在に気づく。4階建ての鉄筋コンクリート造や鉄骨のビルがゴロゴロ転がっている。こんなことが本当に起きるのか? わが目を疑った。しかも隣に倒れているのではなく、水の力によってこれほど重い物体が場所を移動していたのだ」(26ページ)

はたして工学で街は救えたか? 復興はいかにあるべきか? 建築家はどう介在すべきなのか? 東日本大震災発生から半年間の推移と展望をつづった渾身のルポルタージュ。図版多数収録。

【著者】 五十嵐太郎(いがらし・たろう)
  • 1967年パリ生まれ。1992年、東京大学工学系大学院建築学専攻修士課程修了。博士(工学)。東北大学教授。せんだいスクール・オブ・デザイン教員、慶応大学非常勤講師。建築史・建築批評。第11回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2008年)日本館展示コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013芸術監督。著書『新宗教と巨大建築』(講談社2001/ちくま学芸文庫2007)『戦争と建築』(晶文社2003)『過防備都市』(中公新書ラクレ2004)『現代建築のパースペクティブ』(光文社新書2004)『美しい都市・醜い都市』(中公新書ラクレ2006)『現代建築に関する16章』(講談社現代新書2006)『「結婚式教会」の誕生』(春秋社2007)『映画的建築/建築的映画』(春秋社2009)『建築はいかに社会と回路をつなぐのか』(彩流社2010)『現代日本建築家列伝』(河出ブックス2011)、共著『ビルディングタイプの解剖学』(王国社2002)『建築と音楽』(NTT出版2008)『ぼくらが夢見た未来都市』(PHP新書2010)、編著『卒業設計で考えたこと。そしていま』(彰国社2005)『見えない震災』(みすず書房2006)『建築と植物』(INAX出版2008)『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社2009)『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版2010)ほか。



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