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坪井睦子『ボスニア紛争報道』
メディアの表象と翻訳行為
「本書は、ボスニア紛争をめぐるメディア報道の翻訳を取り上げ、それを翻訳学、言語人類学の枠組みで分析した秀逸なメディア翻訳研究です。これまでに日本人が著した通訳翻訳分野での研究の中で、最も優れたものの一つだと思っています。特に、セルビア・クロアチア語に堪能な著者が原語と英語を分析しているので、英語を媒介として日本で報道されるニュースが偏向していく実態が見事に浮き彫りになっていて衝撃的なほどです」
(鳥飼玖美子氏、推薦の辞)
本書はボスニア紛争報道を詳細に分析した重要作です。
現地での報道は、社会・文化的多様性を正確にとらえたものでしたが、欧米メディアを介して偏向して行き、現地の多様な視点は、日本にはほとんど届きませんでした。
ここでは、欧米の主要メディアによる解釈が、有力な「事実」として世界に伝えられていく過程が詳細に分析され、報道の陥穽が翻訳の視座から描き出されています。
現地の情報が、英語そして日本語に翻訳・変換されていく過程において、いったいどのような問題が存在したのでしょうか。そのプロセスを緻密に分析し、報道の偏向からいかに逃れ得るかの手掛かりを示唆します。
国際報道における「翻訳の不可視性と政治性」に挑んだ、翻訳学、メディア論、報道研究に一石を投じる書となっています。
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◇近刊のお知らせ 鳥飼玖美子『戦後史の中の英語と私』
鳥飼玖美子『戦後史の中の英語と私』が、まもなく4月10日、みすず書房より刊行予定です。アポロ月面着陸の宇宙中継をはじめ同時通訳の草分け、「百万人の英語」をはじめ人気の英語教育番組、そして後年の通訳学・翻訳学の樹立、と八面六臂の活躍をつづける著者の書き下ろし。まさしく書名のとおりに、生い立ちから現在にいたる歩みが語られます。初めて明かされるエピソードの数々。ぜひご期待下さい。
4月24日(水)には、東京・神保町の岩波セミナールームでトークイベント「通訳現場から英語教育へ――通訳の実際から更なる高みに向けた試行錯誤の世界へ」も開かれます。


