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2015.03.25トピックス

高安啓介『近代デザインの美学』

著者からひとこと

デザインを語る

高安啓介

本書のような本を書こうと思ったきっかけのなかでも、私にとって印象深い体験をひとつ紹介したいと思います。それは2012年7月21日に愛媛大学にて子どもための建築ワークショップをおこなったときのことです。地元建築家のみなさんの指導のもと、グループごとに小空間をつくるという企画だったのですが、作業に入るまえに私がかんたんなレクチャーをすることになりました。ふだんは大学生のまえで話をしている私ですが、小学校の低学年の子どものまえで何を話したらよいのでしょう。建築家はよく空間という言葉を使いますが、子どもたちに空間という言葉をもちいずに空間について分ってもらうにはどうすればよいのでしょう。専門家を自称する私でさえ空間について非常に曖昧に考えているのではないかと思うようになりました。
ともかく堅苦しい話をするのも退屈だと思い、大学生に手伝ってもらってパワーポイント紙芝居をつくることにしました。空間という言葉を使わないで空間への意識がうまれてくるように、しかしそれでいて建物の固定観念にとらわれないように工夫しました。つかみはなかなかよく、幼児から中学生までみんな手を上げて答えようとしてくれました。




つぎに25名の子どもたちが3グループに分かれて建築家の指導のもとに小空間をつくりました。各自の自由なスケッチに始まって、全員のイメージをひとつにまとめて、材料とかたちを考え、材料の組み立てかたを学びながら、グループごとで異なるかたちに仕上げていきました。こうした作業でとくに大変なのは、頭の中に描いたイメージをいかに材料によって実現していくのか、そしてみんなで考えを出し合っていかにひとつのものを作り上げていくかということです。
実際のグループ作業のなかで効いてくるのは、空間といった抽象概念ではなく、ひらいているのかとじているのか、ひろいのかせまいのか、あかるいのかくらいのか、ぴんとしているのかゆるいのか、といった違いをあらわす言葉でした。

私がそこで感じたのは、空間といった自明のように使われる用語こそ注意がいるのであり、子どもにそれをいかに理解してもらうのかという場面において、ほんとうの理解が試されるということでした。
いうまでもなく、専門家のもちいる用語も、会話でもちいる言葉も、意思疎通のために必要とされるものです。しかし、何かをつくる場面においてそれは、たんなる伝達手段ではなく、新しいものが生み出されるきっかけでもあります。なにもむりに新奇なことをいう必要はありません。デザインにかかわる私たちは、なにげなく使っている用語にすこし意識をめぐらせてはどうでしょうか。
材料にふれるのと同じくらい大事だと思うのは、言葉について問い直してみることです。それは、物事を根本から問い直すことにもつながり、新たな考えにいたるきっかけとなるでしょう。

このワークショップの報告は下記のURLにも掲載しています。
http://atelieraa.jp/cn21/pg113.html

copyright Takayasu Keisuke 2015




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