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『丸山眞男話文集』 4

丸山眞男手帖の会編 [19日刊]

没後に発掘された、文章・講演・座談・インタヴューを刊行。全4冊がこのほど完結いたします。

おしゃべりする丸山眞男

「司会〔區建英〕 アッと言う間に三時間経ってしまいました。私たちにとってはアッと言う間ですけれども、先生にとっては大変でした。一息も休まずに述べていただきました。これは先生の大変な精神力です。」(「儒学・近代化・民主主義」より)

ちょうど昨年の3月上旬に、シリーズのタイトル、『丸山眞男話文集』を決めて、実質的な編集をスタートさせ、先週、一年にわたる作業が終了した。今月末の第4巻の刊行をもって完結する。 『丸山眞男書簡集』に続いて、『丸山眞男手帖』編集部の皆様のご協力をいただき、小社編集部部長の守田とともに、作業を行って来た。『書簡集』の時は、その直筆と向き合い、今回の『話文集』では、講演・座談を中心とした、活字になった肉声を読むこととなり、ともに間接的にではあるが、生き生きとした丸山の言葉と接する機会を得て、貴重な経験となった。タイトルの『話文集』は、「話」と「文」を、両方収録しているという、そのままの意味は、もちろんのこと、おしゃべり好きを自認していた丸山の、「話」が「文」につながっている、「話文」という、独特の表現スタイルを言い表している、という実感が、編集作業を通じて強くなっていった。(『「文明論之概略」を読む』(岩波書店)なども、「話文」の表現が活きている典型的な著作であろう。)

今回の第4巻の圧巻は、1989年の天安門事件の前後に、中国人留学生の質問に、わかりやすく、かつ真摯な熱のこもった語りで答えた「儒学・近代化・民主主義」「天安門事件の後に」である。自身の専門である、東洋政治思想史の研究テーマの一つ、中国の朱子学を日本の儒学者はどのように受容したか、という問題から、マルクス主義に基づく毛沢東主義以前に蓄積された、五・四運動に結実する民主主義思想の遺産を見直す意義まで、その内容は、丸山の思想のエッセンスを凝縮した、素晴らしいガイドブックとなっている。私もゲラを読んでいて、その「話文」の語り口に、はまりこんでしまい、誤字脱字のチェックほかの、肝心な編集作業を忘れてしまっていることに、何度も気付かされた。

このような、ダベりながら、政治と思想と音楽をおしゃべりする、丸山の魅力がぎっしり詰まった全4巻を、お楽しみいただけると幸いです。また、丸山眞男手帖の会発行の『丸山眞男手帖』では、丸山の講演・座談などの発掘、掲載を、引き続き行っています。お問い合わせは、同会まで。
丸山眞男手帖の会http://members3.jcom.home.ne.jp/mm-techo.no_kai/

(出版部・山禄和浩)




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