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鳥飼玖美子『戦後史の中の英語と私』

鳥飼玖美子さんの今までの仕事、多彩な活動の軌跡をふりかえった自伝的エッセイです。生い立ちからたどる現在までの歩み――往時の出来事を回想しつつ、そのとき舞台裏はどうだったのか、何を考えていたのかが語られます。偶然の連鎖で思ってもみなかった人生の転機を迎えたこと、その決意の瞬間のことなど、読みどころが多い本です。

戦後まもない時代に生まれ、激動の時代にスペシャリストとして走り続けてきた姿、その背景としての現代史。初めて語られるエピソードの数々――チャレンジする精神、教育現場での教え子との交流の場面など、強く引き込まれます。

輝かしいキャリアを有する鳥飼玖美子さん。そのライフスタイル、専門世界での仕事への取り組み方。プロ通訳者の世界はどうなっているのか。日本に求められる英語教育とは何か。それらを縦横の軸としたリアリティに満ちた啓蒙書としても読めます。長いキャリアの節目ともいえる現在、心を込めて書き下ろされた本です。

専門的な職業世界で苦闘する生き方は、従来の鳥飼さんのファンに加え、新しい読者の心に響くことでしょう。鳥飼さん、子どものときはのんびりしていて、人見知りだったと聞くと、ちょっと意外です。第一線で国際的に活躍してきた鳥飼さんの紆余曲折の歩み…。仕事の依頼が多かった最中、三人の子育ての時期にあたり、苦闘の連続でした。そんな数々の試練を越えて現在へと至る過程の体験談は、私たちに勇気を与えてくれます。新しい領域の切りひらき方など、挑戦への意志とその方法は、若い読者の心に響くことでしょう。

(とりかい・くみこ)
東京生まれ。大学在学中から同時通訳の第一線で活躍。英語教育番組のキャリアは長く、現在はNHK教育テレビ『ニュースで英会話』監修/講師など。立教大学特任教授。日本における通訳学・翻訳学の樹立をめざす。

鳥飼玖美子『戦後史の中の英語と私』

  • 四六判 272頁 2940円
    ISBN978-4-622-07756-5 C0095
    2013年4月10日刊行
目次
  • プロローグ
  • 第1章 英語との出会い
    第2章 1960年代とアメリカ
    第3章 アポロ宇宙中継と大阪万博、そして沖縄返還
    第4章 偶然の積み重ね――通訳から大学英語教育という世界へ
    第5章 「通訳者」という存在
    第6章 教育そして教師というもの
    第7章 生涯学習を実践する
    第8章 メディア英語講座と私
    第9章 言葉へのこだわり
    第10章 思い込みからの脱却
  • エピローグ
  • あとがき

◆トークイベント「通訳現場から英語教育へ」[終了しました]

八面六臂の活躍をつづける鳥飼玖美子・立教大学特任教授を講師に、トークイベント「通訳現場から英語教育へ――通訳の実際から更なる高みに向けた試行錯誤の世界へ」が、2013年4月24日(水)、岩波セミナールーム(岩波書店アネックス3階)で開かれます。18時半開演(18時開場)、入場無料、定員50名(要電話予約)。お問い合わせ・事前申し込みは岩波ブックセンター信山社(電話03-3263-6601)へ、ぜひどうぞ。




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