みすず書房

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S・ヴェイユ/メルロ=ポンティ 生誕100年

[記念復刊]

思想家シモーヌ・ヴェーユ(1909年2月3日‐1943年8月24日)。今年の生誕100年を記念して、伝記『シモーヌ・ヴェーユ 最後の日々』を新装復刊いたします。

ジャック・カボー『シモーヌ・ヴェーユ 最後の日々』

(山崎庸一郎訳、訳書初版1978年)[新装版]

同じ著者カボーによる『シモーヌ・ヴェーユ伝』(山崎庸一郎・中條忍訳)を補う、最晩年の伝記です。1942年6月のマルセイユ出港から、ニューヨークをへて亡命先ロンドンでド・ゴールの自由フランス軍に参加し、翌年8月の悲劇的な死まで、著作に打ち込んだ15カ月を描きます。ロンドンの結核療養所で息をひきとったヴェーユの死因は、「飢餓および肺結核による心筋縮退から生じた心臓衰弱」でした。戦時の食料の統制下、フランスで認められた割り当て以上の食物をヴェーユは決して口にしなかったのです。
ただ真理のみを追求した稀有の魂、極限をめざしたひとりの女性の心の記録として、ヴェーユ自身の文章を編んだ『ヴェイユの言葉』(冨原真弓編訳)とともにぜひ味読下さい。

哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908年3月14日‐1961年5月3日)。昨年生誕100年を迎え、記念シンポジウムなどの催しもさまざまに開かれました。
生誕100年によせて、みすず書房でも、つぎの3点をこのほど記念復刊いたします(4月9日刊)。

『行動の構造』

(滝浦静雄・木田元訳、訳書初版1964年)

『知覚の現象学』とともに学位論文を構成する主著のひとつです。フッサールの現象学、サルトルの実存主義から出発して、パヴロフやゲシュタルト心理学などの精神医学・生物学・生理学の理論と対決し、行動概念の検討を通じて人間存在の新しい意味の基礎づけを試みた書。レジスタンス運動の中から生まれ、パリ解放後の1945年に『知覚の現象学』とあわせ学位論文として提出、公刊。戦後思想に与えた影響力は測り知れません。

『見えるものと見えないもの――付・研究ノート』

(滝浦静雄・木田元訳、訳書初版1989年)

一方、本書はパリの自宅で執筆中、心臓麻痺による急逝のため未完に終わった大著です。この『見えるものと見えないもの』の草稿群と、晩年の思考をそのまま伝える「研究ノート」とを一書に収めます。みずからの到達した思想に根底的な批判を加え、野生の存在、垂直の世界、肉の哲学、交叉配列、転換可能性など、人間と世界をめぐる逆説を生き生きと描き、新たな存在論を提示した、その思想の総決算の著作です。

『意識と言語の獲得』

(木田元・鯨岡峻訳、訳書初版1993年)

最初の著書と、絶筆、そしてもう一冊の本書『意識と言語の獲得』は、中期の思想の核心をなすものです。『行動の構造』と『知覚の現象学』で哲学者としての地位を確立した著者が、1949年ソルボンヌに移り、児童心理学および教育学の主任教授となったときの講義録。当時、身体論からソシュール研究を中心に新たな言語論を模索していたメルロ=ポンティの、思索の歩みが刻印されています。「意識と言語の獲得」「大人から見た子ども」の二講義を所収、ピアジェやギヨームから文化主義的社会学まで。




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