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2014.09.09トピックス

M・ガーディナー編著『狼男による狼男』

フロイトの「最も有名な症例」による回想 馬場謙一訳

「夜私はベッドに寝ていました(…)。急に窓がひとりでに開きました。窓の向こうの大きなくるみの木に幾匹かの白い狼が座っているのを見て、私はびっくりしました。狼は六匹か七匹いました。彼らは真っ白で、どちらかといえば狐かシェパードのように見えました(…)。この狼たちに食べられるのではないかという非常な不安に襲われて、私は大声をあげ、泣き出し、目が覚めました」
――『フロイト著作集 9』(人文書院)より一部改変して抜粋

「狼男」――それがこの夢を語った患者の通称である。
フロイトの症例「狼男」ことセルゲイ・パンケイエフは、1887年にロシアの裕福な貴族の家系に生まれた。彼自身の振り返るところでは、父親のもつ広大な領地で、両親や仲のよい姉、乳母やユニークな客人たちに囲まれて育っている。

やがて青年期になり、国内外の治療施設を転々とするようになったセルゲイがフロイトの精神分析治療を受け始めたのは、1914年、彼が27歳になる年のことである。フロイト曰く、そのころの彼は「まったく依存的になり、独りではとても生活できないような状態に陥っていた」という。

フロイトに治療を受けるまでに、セルゲイ青年にいったい何があったのか――。 裕福なロシア貴族セルゲイ・パンケイエフ、そして、人生の後半にあたる半世紀以上を症例「狼男」として生きた男。本書に綴られるのは、まるでその二つの人生のあいだを埋めていくような回想録である。

この回想録には、精神分析の「後」も記されている。セルゲイは保険会社に職を得て、定年までの30年間その仕事をまっとうしたという。
フロイトとの精神分析は、彼にどんな影響を与えたのか?
「セルゲイ」と「狼男」、この二つの呼び名をもった生涯のなかに、その問いの答えがあるのかもしれない。




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