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『われらのジョイス』
五人のアイルランド人による回想 ユーリック・オコナー編著 宮田恭子訳
現代の文学者のなかで研究者がいちばん多いのはいったい誰だろうか? 調べたことはないが、ベストテンのなかにジョイスが入るのは確実と思われる。この零細なる小社からでもR・エルマンの大著『ジェイムズ・ジョイス伝』をはじめ、弟のスタニスロースの手になるけっこう辛辣な回想的伝記『兄の番人』があり、わが国の研究者の本としては、宮田恭子氏の力作である『ジョイスのパリ時代』と『ジョイスと中世文化』、それに川口喬一氏の『昭和初年の〈ユリシーズ〉』が加わる。これはかなりの壮観ではなかろうか。
さらに今回は、瀟洒なスタイルで『われらのジョイス』という、小型ながら中身の濃い〈ジョイス回想〉が刊行された。詳しくはカバー説明や本文を読んでいただきたいが、今まで知られていなかった細部が生き生きと描かれていて、とても刺戟的である。異国にいてもつねにダブリンを思い出し、ラグビーや水泳の好きな人物――これだけでも狷介不屈な孤高の文学者というイメージが覆されるにちがいない。訳者の宮田恭子氏が『ジョイスと中世文化』を刊行されてすぐ、その三カ月後に本書を翻訳出版されたことからも、この五人の回想記が格段に面白いということが分かるだろう。さあ、手に取ってください。
- エルマン『ジェイムズ・ジョイス伝』 1 (宮田恭子訳)はこちら
- エルマン『ジェイムズ・ジョイス伝』 2 (宮田恭子訳)はこちら
- 宮田恭子『ジョイスのパリ時代』はこちら
- 宮田恭子『ジョイスと中世文化』はこちら
- 川口喬一『昭和初年の〈ユリシーズ〉』はこちら
- 池澤夏樹『雷神帖』はこちら
- 富士川義之『きまぐれな読書』はこちら
- 河野徹『英米文学のなかのユダヤ人』はこちら
- クルツィウス『ヨーロッパ文学評論集』(川村二郎訳)はこちら
- ブラウン『ラヴズ・ボディ』(佐々木俊三・宮武昭訳)はこちら
- カウリー『ロスト・ジェネレーション』(吉田朋正・笠原一郎・坂下健太郎訳)はこちら

