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黒沢文貴『大戦間期の宮中と政治家』
大正期日本の君主制においては、二重の意味で大きな暗雲が立ち込めていた。ひとつは、日本と関係の深い世界各国の君主制がつぎつぎと崩壊したことである。隣国では、清朝が辛亥革命により倒壊し、共和政体が出現した。そして同じく隣国であり同盟国でもあるロシアをはじめ、ドイツやオーストリアなどヨーロッパ各国の代表的な君主制も、第一次世界大戦の結果として倒壊していた。さらに、ロシア革命にともなう「過激思想」の国ソ連の誕生と、「共和政治ノ先鞭者タル」アメリカ合衆国の存在も脅威であった。
もうひとつは、「我国体の尊厳無比」に密接に関係する問題、すなわち「大帝」明治天皇の死にともなう「病弱」な大正天皇の登場とその統治能力の低下という問題であった。
この二つの大きな暗雲を払いのけるためには、大正天皇に代わって皇太子に「身」としての天皇の役割を事実上期待せざるをえず、そこに皇太子および皇太子妃候補者の教育・陶冶、そして身体性にかかわる問題が、強く意識される素地が生まれることになったのである。
以上の状況下、皇太子裕仁親王のヨーロッパ行、および久邇宮邦彦王の第一王女良子との結婚については、さまざまな立場の人間のそれぞれの思いがうごめいていた。山県有朋、松方正義、西園寺公望の三元老や原敬首相、久邇宮家、貞明皇后、さらに宮中に入った牧野伸顕などは何を考え、どう活動したのか。
本書は、この主題を扱った第一部第1章「裕仁親王の外遊と結婚」にはじまるファシズム前夜から、経済恐慌、軍部の台頭、敗戦にいたる諸相を、具体的な人物の生き方を通してヴィヴィドに描いています。
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