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2014.04.28トピックス

成田善弘『精神療法家の本棚』

私はこんな本に交わってきた

本書は、長く精神療法家として活躍し、多くの本に著者・評者・訳者・編者としてかかわってきた著者による、自身と本とのかかわりをめぐる書き下ろしである。実はこの本には、副題から察せられる本とのかかわりのみならず、著者が出会った多くの臨床家との交流も描かれている。

土居健郎氏、小此木啓吾氏、笠原嘉氏、村瀬嘉代子氏などなど……精神療法の世界では知らぬ者のない豪華な面々との出会い。本書のなかでも著者は精神療法家の「孤独さ」に何度か触れているが、心の専門家同士の交流はきわめて心の深いところで続けられてきたように読める。

本書に再録したこれまでの書評群のいずれをみても、一貫してその本の著者が何をアイデンティティとして(あるいは心のよりどころとして)書いたのか、という視点が入ってくる。それを成田氏は「著者自身も気づいていない心の源泉」に近づくことだと書いているが、その書評群を通読していくと、なんとなく書評対象の本の著者がどんな人柄なのかわかってくるような気がする。成田氏は自分には「芸」がないと自嘲気味に書くが、著者の人柄までも描く書評の手腕は立派な芸となっている。

かつて成田氏は、本を書くことが「何人もの先達と引き合わせてくれた」と書いていた。本書もまた、成田氏を多くの人と引き合わせるだろう。
本書には、実在人物・作中人物を問わず、〈本〉が成田氏に出会わせた数々の登場人物がいる。成田氏が描くその多くの登場人物の姿も楽しんでいただきたい。

精神療法家という人生は、つくづくやっかいで、きっと楽しい人生なのだろう。




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