みすず書房

樋口陽一『「日本国憲法」 まっとうに議論するために』

[改訂新版]

2015.09.25

樋口陽一先生

ご無沙汰いたしております。
向夏の候、お変わりなくお過ごしでしょうか。

さて、この度、折り入ってお願いしたいことがございまして、筆をとりました。
以前、《理想の教室》シリーズの一冊としてご執筆いただきました『「日本国憲法」まっとうに議論するために』は、好評を博し読み継がれ、版を重ねてきております。また、同書の電子書籍版もコンスタントに購読されています。

そこで、現在の状況を鑑み、昨今の情勢を見据えた新章を本書に加筆していただきたく、 お願い申し上げます。その新しい章を加え、シリーズの一書ではなく、単行本で《増補新版》として刊行できればと考えております。ご一考いただければ幸いです。

2015年6月22日
みすず書房編集部 島原裕司

みすず書房 島原裕司様

まさしく「現在の状況を鑑み」て、お誘いをお受けすることにします。
先日国会前の若ものたちの集会で短い話をして、暗がりの中でも、話し手の語りぶり、参集した学生たちの顔の輝き(!)に救われる思いでした。

刊行の形式は、そういう、特に若い人たちに少しでも多く読んでもらえるやり方で、 ご判断にお任せします。

2015年6月27日
樋口陽一

みすず書房 島原裕司様

原状はそのままにして一章書き足すという方針で下書きをつくったけれど気に入りません。そこで、2006年版そのものを、その後10年のことをとり入れて書き足す。そのうえで、あとがきを新しく書く、ということにします。
06年版を見開きB4のコピーにしてお送り下さい。そこに補筆します。

2015年8月1日
樋口陽一

P.S. 目下の「状況」に強いられて、7月は週に2-3度日帰り上京していました。 8月はそれほどひどい日程にはしません。

* このような過程を経て、本書・改訂新版はできあがりました。
編集作業が続くなか、著者の思いの籠った筆跡のFAXが届き、勇気づけられる日々でした。完成した本についてはをご覧ください。

樋口陽一『「日本国憲法」 まっとうに議論するために』[改訂新版](みすず書房)カバー

2015年9月17日、
国会前でスピーチする樋口先生
  • 本書の目次
  • はじめに
  • 迷路へのチャレンジ
    言葉の重み
    全体としての国民と、ひとりひとりの国民個人
    「Nation」とは?
    国民国家か民族国家か
    統合型と多元型
  • 第1回 「憲法」とは
    ――四つの89年
  • 憲法を「確定」するということ
    「憲法」を制定するということ
    「人類普遍の原理」
    日本近代化のはじまりと立憲主義
    帝国憲法のあゆみ――光と影
    四つの89年
    憲法に「自国らしさ」を?
    誰にとっての「おしつけ」?
    外来のものが定着した例
    二つの『敗戦日記』から
    「最高法規」としての憲法
    憲法「制定」権力と憲法「改正」
    「憲法改正の限界」
    憲法を「尊重し擁護する」義務
    「自由の敵には自由をみとめない」?
  • 第2回 「人」としての権利(1)
    ――個であることの「淋しさ」に耐える
  • 「個人として尊重される」
    「人」権の含意
    主権――個人の解放と個人への抑圧
    「恩賜的」民権と「恢復的」民権
    「人」権に対する疑問と論難
    「強い個人」という想定
    「私の個人主義」の「淋しい心持」
    「因襲を破る」危険な自由
    「権力」 vs 「自己本位」
    「金力」 vs 「自己本位」
    国家からの自由と社会的権力からの自由
    信教の自由 vs 政教分離
    「みんなで決めてはいけないことがある」
    「自分でも決めてはいけないことがある」?
    「家」の旧秩序を否定
    「自己本位」と家族の間の緊張?
    「ジェンダー」とジャンル
  • 第3回 「人」としての権利(2)
    ――自由と・または公正
  • 「公共の福祉」が出てくる条文
    「プロパティ」の意味
    「社会的権利」の登場
    「胸の肉一ポンド」は?
    独占禁止法の論理は
    独占の自由か独占からの自由か
    「真理と虚偽を組打ちさせよ」
    言論市場の閉塞?
    「等しきものを等しく」
    条件の等しさを求めて
  • 第4回 「市民」としての権利
    ――公共社会を自分たちがつくる
  • 「市民」の権利――主権に参加すること
    立憲主義と権力の分立
    権力の集中を前提とした分立
    権力分立論者ルソー
    権力分立機構と国民とのつながり
    「代表」――個別利益の代弁を禁止
    「半代表」という考え方
    政党の位置づけ
    議会政治 and/or 政党政治
    責任内閣制へのあゆみ
    「国会」に対する責任
    二院制には今日なお意味がある
    「責任」とは
    政権交代
    「決める政治」と「決めさせない」政治
    裁判する権力――二つの見方
    日本は――アメリカ型でもヨーロッパ型でもなく?
    裁判官の「職権」の独立
    「裁判官」の職権の独立
    「判例」というもの
    裁判官を hire し fire する?
    違憲審査という問題性
    「ただ乗り」と「わる乗り」?
  • 第5回 第九条
    ――「汝、平和を欲すれば…」
  • 主権国家と国際法
    国家の主権の相対化
    憲法九条の背景にあるもの
    第二項の意義
    「まっとうな」九条改憲とは?
  • あらためて「近代」の意味を考える
  • 日本人のDNA?
    2012年自民党改憲案の日本社会像
    「天賦人権説に基づく規定振り」の排除
    Land と Nation と State
    「かたち」の中身を埋めるのは
    「近代の超克」?
    自己への疑いをつきぬけて
  • 改訂新版へのあとがき
    日本国憲法[全文]
    読書案内