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サンスティーン『最悪のシナリオ』

巨大リスクにどこまで備えるのか 田沢恭子訳 齊藤誠解説

【問1】
政府は2つの環境問題について検討している。第一の問題では、2億人が死亡するリスクが100万分の1、誰も死亡しないリスクが100万分の99万9999である。第二の問題では、2000人が死亡するリスクが10分の1、誰も死亡しないリスクが10分の9である。あなたの考えは次のうちどれか。
a 第一の問題のほうが優先度が高い
b 第二の問題のほうが優先度が高い
c 二つの問題の優先度は等しい
【問2】
政府が2つの環境問題について検討している。第一の問題については、政府は悪い結果の発生確率を推定することができる。政府の考えでは、90パーセントの確率で600人が死亡し(600人の死亡が最悪のシナリオとなる)、10パーセントの確率で400人が死亡する。第二の問題については、政府はさまざまな結果の確率を特定することができない。最悪のシナリオは700人の死亡である。あなたの考えは次のうちどれに当てはまるか?
a 第一の問題を優先すべきである
b 第二の問題を優先すべきである
c 二つの問題に同等の優先度を与えるべきである

あなたはどれを選んだだろうか。サンスティーンが行ったアメリカの法学部生を対象にした調査では、問1については、41%がbを、36パーセントがcを、22%がaを選び、問2については、63%がaを選び、残りはちょうど同数ずつbとcに分かれた、という。

このようなリスクに対する人間心理の傾向性をふまえたうえで、さらにサンスティーンは「壊滅的な災害」についての予防原則と費用便益分析の検討に向かう。それについては、解説をご執筆いただいた齊藤誠先生のコメントをご覧ください。
http://www.hit-u.ac.jp/academic/book/2012/120823.html

原発事故を考える際の論点が多く含まれた、とても示唆的な書籍です。




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