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2016.03.11トピックス

ライフワーク『神話論理』に連なる「小神話論理」終結の巻

C・レヴィ=ストロース『大山猫の物語』 渡辺公三監訳 福田素子・泉克典訳

人類学者クロード・レヴィ=ストロースのライフワーク『神話論理』四部作(1964-71)[邦訳全5冊]に連なる、「小神話論理」三部作『仮面の道』(1975)『やきもち焼きの土器つくり』(1985)『大山猫の物語』(1991)。その終結の巻の邦訳刊行です。

『神話論理』の探求は南アメリカのボロロ族の語る「鳥の巣あさり」を基準神話として出発し、第三巻『食卓作法の起源』からは分析の領域を北アメリカへも広げ、南北両大陸を往き来して進行しました。『やきもち焼きの土器つくり』では、料理用の土器つくりの起源をもとめて、南アメリカで土器つくりの技と結びついたヨタカの神話群がとり上げられました。
『大山猫の物語』の舞台はおもに北アメリカです。かつては似た者同士だった大山猫とコヨーテが諍いを起こして、コヨーテは相手の鼻面と尻尾を押し縮め、大山猫は相手の鼻面と脚を引き延ばし、今の姿になったという。この対の形象を軸として、「双子であることの不可能性」を主題に『大山猫の物語』は展開します。

限りなく同一者に近い双子の形象にこだわるヨーロッパ古典古代の神話的思考に対して、瓜二つではありえない不可能な双子の形象にこだわる南北アメリカ先住民の神話。その対比の考察は、コロンブスによる新大陸「発見」をめぐってさらに深められてゆきます。フランス系カナダ人たちが毛皮をインディアンから買うだけではなくともに狩をし、野営して、夜になると火を囲んでフランス民話を語って聞かせ、そうして伝えられた旧世界の民間伝承の多くの挿話を、インディアンたちはどうとり入れ、自分たちの神話体系のなかに融合させていったか。インディアンと白人という、不可能な双子――

「アメリカ・インディアン[…]の二元論の原動力は、白人との初めての出会いの際にあからさまに示された、他者へ開かれた心であるように見える。白人のほうではそれと正反対の感情につき動かされていたのではあるが。」
レヴィ=ストロースはそう「序言」で述べます。

『大山猫の物語』の書かれた同時代の歴史的文脈として、コロンブスの新大陸「発見」500周年をひかえてさまざまの記念行事が各地で企画されるいっぽう、学問分野を越えて同時代の世界をどう考えるかという問いがさまざまに提起されていたことや、サーリンズ『歴史の島々』対オベーセーカラ『キャプテン・クックの列聖』の論争、またルイ・デュモン『ホモ・ヒエラルキクス』、ヴィヴェイロス・デ・カストロ『インディオの気まぐれな魂』、ピエール・クラストル『国家に抗する社会』などの他の著作と『大山猫の物語』とを今日どう併せ読むことができるかを含め、精細な解説が渡辺公三「監訳者あとがき」でなされています。ぜひお読みになって下さい。

『大山猫の物語』刊行にあわせて4点重版

『構造人類学』『構造・神話・労働』『遠近の回想』、そしてガイドブック『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』渡辺・木村編を重版いたしました。

きわめて豊かな『神話論理』の準備期だった1950年代、神話研究と並行して社会組織についての研究も展開されていました。その成果としてまとめられた論文のいくつかを収める『構造人類学』(荒川幾男他訳)。構造主義人類学のマニフェストというべき論集です。

1977年、国際交流基金の招きでレヴィ=ストロースは初来日しました。そのときの講演集『構造・神話・労働』(大橋保夫訳)。6週間の日本滞在中におこなった講演、対話に加え、非公開のシンポジウムの記録を収め、平易な言葉で語られた彼自身によるレヴィ=ストロース入門の書となっています。

自身を語ることの少なかったレヴィ=ストロースですが、年若い鋭敏な聞き手を得て、貴重な証言にみちているディディエ・エリボンとの共著『遠近の回想』(竹内信夫訳)。邦訳初版は1991年でしたが、2008年の増補新版で、補足的なインタヴュー「二年後に」が付されています。

そして、豊饒な神話の森のガイドブック、渡辺公三・木村秀雄編による『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』は、巻末の「レヴィ=ストロース主要著作目録」(泉克典作成)をこの機に改訂いたしました。
当初からこの著作目録は、著書および主要な論文を紹介すること、のちに『神話論理』に結実する思考の形成過程を高等研究院やコレージュ・ド・フランスの講義題目などから追うこと、邦訳刊行の書誌から日本におけるレヴィ=ストロース受容を考える手がかりとすること、という特色をそなえていました。
このたびの改訂で、祝99歳、祝100歳の折や、追悼特集・没後出版によって近年増えた書誌を加えることができ、ページも4ページ増となりました。現在のところ日本語で読めるレヴィ=ストロース文献の書誌をほぼ網羅する案内となっています。
中沢新一、マルセル・エナフ、内堀基光、鈴木一誌、港千尋、安冨歩、池澤夏樹の豪華執筆陣。2005年の秋に97歳の誕生日を目前にパリでおこなわれたレヴィ=ストロースのオリジナル・インタヴュー(聞き手・渡辺公三)も収めています。

関連書多数

彼自身による『神話論理』入門といえば、ラジオ講話をもとにした『神話と意味』(大橋保夫訳)があります。カナダCBCラジオで放送された5話。コンパクトな一冊です。
レヴィ=ストロース自身の著作以外に、レヴィ=ストロース論、そのほか関連書籍も多く出版しています。




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