みすず書房

トピックス

シリーズ《始まりの本》

[最新刊](2014年1月24日)

始まりとは始原(オリジン)。
新たな問いを発見するために、いったん始原へ立ち帰って、
これから何度でも読み直したい現代の古典。
未来への知的冒険は、ふたたびここから始まる。

* 2014年1月24日配本 (2冊)

『ヒステリーの発明――シャルコーとサルペトリエール写真図像集』


ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 谷川多佳子・和田ゆりえ訳 上・下
  • ――今日われわれに、『サルペトリエール写真図像集』が残されている。すべてがそこにある――ポーズ、発作、叫び、「熱情的態度」、「苦悩」、「恍惚」、あらゆる錯乱の姿態。写真のもたらすシチュエーションが、ヒステリーの幻影と知の幻影との絆を理想的に結晶させたがゆえに、すべてがそこに有るように見える。呪縛の相互作用が定着したのだ。すなわち、「ヒステリー」の映像を飽かず求めつづける医師たち――従順に身体の演劇性を増幅していくヒステリー患者たち。こうしてヒステリーの臨床医学はスペクタクルになった。〈ヒステリーの発明〉だ。それは暗々裡に、芸術にも比すべきものに自らを同一化していった。演劇や、絵画とも紛うものに。――
  • ――フロイトは催眠のプロセスを、多大な教導権をもつがゆえに自我理想となるにいたるひとりの「主人」を前にした、患者の「恋による全面的自己放棄」として描き出した。とりわけこうした理由から、催眠術師に命令されるや、現実吟味そのもの(私はほんとうは小鳥でも蛇でもなく、僧侶でも、女優でさえもない……)が挫折する。この機会にフロイトは、恋愛状態から催眠へ、さらには集団構造へ、最終的には神経症へといたる、点線ではあるが揺るぎのないラインを引いたのであった。彼は催眠をあるときは愛、またあるときは魔術として語るが、ほとんどの場合それを暴力として捉えている。それは呪縛と残酷さの中間にある技術についての一観念なのである。――

* 2013年8月23日配本 (1冊)

『ケアへのまなざし』


神谷美恵子 外口玉子解説
  • ――弱者に対する強者の優越感というものは医療の場では極めて起こりやすいことで、しかも強者自身は案外気づいていないことが多いのではなかろうか。医療者も一度病人という弱者になってみるのが一ばん手っ取り早く、このことに気づく道かもしれないが、みんなにこの道をとられても困る。だから唯一の可能な道は「自分もまた病みうる者だ」「自分もまた死にうる者だ」ということを、絶えず念頭においておくことだろう。 もうひとつ医療者が知らず知らず持ちやすい思いあがりの心は、「患者の心は何もかもよくわかっている」と思い込んでしまうことだろう。――

* 2013年6月25日配本 (2冊)

『ベンヤミン/アドルノ往復書簡 1928-1940』


H・ローニツ編 野村修訳 森田團解説 上・下
  • ――もう一度強調させていただきたいのは、「祈り」としての「注意深い心づかい」の重要性です。あなたの書かれたもののうちで、これにまさって重要なものはあるまい、あなたの内奥の諸モティーフについて、これほど厳密に解き明かしてくれるものは、ほかにはあるまい。(アドルノからベンヤミンへ)
    ぼくはきみの手紙を、たんに読んだのではなく、研究した。あの手紙の一語一語が、熟考を求めてくる。きみがぼくの志向をきわめて正確に捉えているだけに、きみによる欠陥の指摘は、大いに重みをもつ。(ベンヤミンからアドルノへ)――
  • ――出口のない状況にあって、ぼくはそれに、けりをつけるほかなくなっている。ぼくが生を終えようとしているのは、誰ひとりとしてぼくを知る者のいない、ピレネー山中の小さな村のなかだ。あなたにお願いするが、ぼくの思いをぼくの友人のアドルノに伝え、ぼくが置かれることとなった状況を、かれに説明してやってほしい。書ければ書きたかった手紙という手紙を書くだけの時間が、ぼくには残されていないのだ。(ベンヤミン最期のアドルノへの伝言)――

* 2013年4月10日配本 (1冊)

『ロシア革命の考察』

E・H・カー 南塚信吾訳
  • ――レーニンは、説得とか教化というものは、それを受ける人々の心に合理的な確信を植えつけようとするものであるという意味において、それを合理的な過程とみなした。スターリンは、それが合理的なエリートによって計画されそして行なわれるという意味においてのみ、それを合理的な過程とみなした。その目的は、多数の人々を一定の望ましい行動に向けて誘導することであった。(…)しかし、この目的を達成するさいに用いるべき最も有効な方法は、必ずしも、つねにまたはしばしば、理性にかなうものではなかった。――

* 2013年2月21日配本 (2冊)

『孤独な群衆』


デイヴィッド・リースマン 加藤秀俊訳 上・下
  • ――この本でとりあつかうのは、社会的性格と、ことなった地域、時代、集団にぞくする人間の社会的性格の相違についてである。われわれは、いったん社会のなかにできあがったことなった社会的性格が、その社会での労働、あそび、政治、そして育児法などのなかに展開してゆく仕方をかんがえてみたいとおもう。そしてとりわけ、十九世紀のアメリカの基調をなしたひとつの社会的性格が、まったくべつな社会的性格にだんだんと置きかえられてきている事情を、この本では問題にしてみたい。なぜ、こうした変化がおきたのか。どんなふうにこの変化はおきたのか。――
  • ――もしも、他人指向的な人間がじぶんがいかに不必要な仕事をしているか、そして、じぶんじしんの考えだの、生活だのというのがそれじしん他人たちのそれとおなじようにじつに興味深いものであるということを発見するならば、かれらはもはや群衆のなかの孤独を仲間集団に頼らないでもすむようになるであろう。人間はそれぞれの個人の内部に汲めどもつきない可能性をもっているのだ。そのような状態になったとき、人間はじぶんじしんの実感だの、抱負だのにより多くの関心をはらうようになるにちがいない。――

* 2013年1月7日配本 (1冊)

『サリヴァン、アメリカの精神科医』

中井久夫
  • ――現在の精神医学は症状によって診断し、その症状の薬物による撲滅を第一とする。統合失調症の診断を狭くしたのは病名にからむスティグマを考慮したといっても、それはスティグマを負う人数を減らしたにすぎない。患者をまず症状によって評価し分類し特徴づけることは、患者をそのもっとも影の部分によって評価することである。これは患者の自己評価を落とし、自己尊敬を空洞化し、陰に陽に慢性状態成立に貢献しているであろう。これに対してまず人柄を問うサリヴァンの方法は、モラル・トリートメントの伝統に立つものである。有効な薬物があらわれたことは、この伝統を不要にすることではない。むしろ、ますますそれが要請される事態である。――

* 2012年12月25日配本 (1冊)

『物理学への道程』

朝永振一郎 江沢洋編
  • ――自分のようなものが大それた学問などやろうと思ったのは結局やっぱりまちがいだった、といった想念がいつも心の底にこびりついている。そんなとき、東山荘の朝の礼拝から聞こえてくる讃美歌の甘美な声に意味もなく涙ぐんでみたり、そうかと思うと、その礼拝の蜜豆のような甘いだけのムードに反発を感じてみたり、」そしてあたりの自然がみずみずしく美しければ美しいで、物理学的自然などという灰色の世界をいじくりまわすことの何と空虚なわざであることよ、などと言いたくなってきたりする。しかしそれと同時にこんなことを言う自分が、イソップの「すっぱい葡萄」に登場する狐のようにひねくれた人間に見えてきたりする。(「思い出ばなし」より)――

* 2012年12月21日配本 (1冊)

『パリ、病院医学の誕生――革命暦第三年から二月革命へ』

E・H・アッカークネヒト 舘野之男訳 引田隆也解説
  • ――当時の医学は、私たち現代の「研究室医学」とはちがっていたし、また古代の「ベッドサイド医学」でもなかった。〔…〕この55年間には、その主要な要素にちなんで私たちが「病院医学」と名づけた、まったく特殊で独特な型の医学が起こったのである。〔…〕 病院を廃止しようとしたこの革命は、病院を改善し、医学の中心とした。公の医学教育を廃止しようとしたこの革命は、新しい非常に強力な医学教育を創造した。医学の廃止を夢みたこの革命は、医学の新時代を開いた。(本文より)――
  • ――解剖学のまなざしと臨床医学のまなざし、すなわち病理解剖学の屍体空間と臨床医学の病の時間とは、元来、地理と歴史の相違として、対立する構造をもっているからである。屍体空間と病の時間という異質なものが重なりあうことこそ、「臨床医学の誕生」の秘密であり、「病院医学の誕生」の秘密なのである。『パリ、病院医学の誕生』を『臨床医学の誕生』と重ねて「読む」意義は、そこにある。(解説より)――

* 2012年11月1日配本 (1冊)

『カフカとの対話――手記と追想』

グスタフ・ヤノーホ 吉田仙太郎訳 三谷研爾解説

* 2012年9月10日配本 (1冊)

『隠喩としての病い/エイズとその隠喩』

スーザン・ソンタグ 富山太佳夫訳

* 2012年6月22日配本 (2冊)

『プロメテウスの火』

朝永振一郎 江沢洋編 [好評重版]

『科学史の哲学』

下村寅太郎
[加藤尚武解説]

* 2012年6月8日配本 (3冊)

『チーズとうじ虫』

16世紀の一粉挽屋の世界像
カルロ・ギンズブルグ 杉山光信訳
[上村忠男解説]

『政治的ロマン主義』

カール・シュミット 大久保和郎訳
[野口雅弘解説]

『望郷と海』

石原吉郎
[岡真理解説]

* 2012年4月配本 (2冊)

『ノイズ』

音楽/貨幣/雑音
ジャック・アタリ 金塚貞文訳
[陣野俊史解説]

『素足の心理療法』

霜山徳爾
[妙木浩之解説]

* 2012年1月配本 (2冊)

『天皇制国家の支配原理』

藤田省三

『アウグスティヌスの愛の概念』

ハンナ・アーレント 千葉眞訳

* 第1回配本 (2011年11月・6冊)

『臨床医学の誕生』

ミシェル・フーコー 神谷美恵子訳
[斎藤環解説]

『二つの文化と科学革命』

チャールズ・P・スノー 松井巻之助訳
[S・コリーニ解説(増田珠子訳)]

『天皇の逝く国で』

[増補版] ノーマ・フィールド 大島かおり訳

『可視化された帝国』

近代日本の行幸啓
[増補版] 原武史

『哲学のアクチュアリティ』

初期論集
[初書籍化] テオドール・W・アドルノ 細見和之訳

『進歩の終焉』

来るべき黄金時代
ガンサー・S・ステント 渡辺格・生松敬三・柳澤桂子訳
[木田元解説]

* 続刊予定

『行動の構造』上・下

M・メルロ=ポンティ 滝浦静雄・木田元訳

『沈黙の世界』

マックス・ピカート 佐野利勝訳

『知性改善論・短論文』

バールーフ・デ・スピノザ 佐藤一郎訳

『アメリカ論』(仮)

W・C・ウィリアムズ

[以下続刊]




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